アパレル産業で起きている新たな流れ|エシカルファッションとは

エシカルファッションとは、環境や人権に配慮した消費行動であるエシカル消費に基づいたファッションを指します。

近年、特定の地域での不当な強制労働や、売れ残り製品の大量廃棄などがニュースで頻繁に取り上げられています。

今、取り上げられているアパレル産業の問題点から、それらを解決するための概念であるエシカルファッションの概要について紹介します。

アパレル産業の問題点

1990年代後半から世界で台頭し始めたファストファッション。2000年代に入ると、外資系から国内ブランドまで、多くのファストファッションブランドが台頭し始め、その市場規模は急拡大しました。

日本国内ではリーマンショック以降、消費者の低価格志向が高まっており、それに応じて企業も生産コスト削減のため、中国やベトナム、バングラデシュといった低賃金で豊富な労働力がある国へと生産工場を構えるようになりました。

ファストファッション業界ではトレンドサイクルが早いため、大量生産された製品の売れ残りである「余剰在庫」が発生しやすい状況にあります。

日本国内の衣類供給数と売れ残り

小島ファッションマーケティングによると、2018年の下着を除いた衣類の国内供給数は約29億点となっており、そのうちの推定消化率は46.6%となっています。これは、生産された衣類の53.4%(約15億5000万点)が売れ残っているということです。

総供給数が11億9600万点だった、1990年の推定消化率が96.5%であったことを踏まえると、この30年間近くで消化しきれない衣類が過剰に生産されていることがわかります。

このように売れ残った衣類については、一部の企業では次のシーズンへの持ち越しや、二次流通業者への販売などがなされていますが、中には一度も使用されないまま廃棄される衣類もあります。

大量生産による環境への影響

国際連合広報センター(UNIC)によると、ジーンズを1本作るためには約7,500ℓを使用しており、ファッション業界全体では、1年間で930億立方メートルの水を使用しています。これは500万人に生活するうえで必要な水分量に相当するとしています。

その他にも、衣類の製造によって年間で石油300万バレルに相当するマイクロファイバー(約50万トン)が海洋に流出しており、海洋汚染の原因となっています。

国連貿易開発会議では、これらの背景からファッション業界を世界で第2位の環境汚染産業だと指摘しました。

生産のグローバル化と人権問題

生産コスト削減のために移転された、東南アジアを中心とした海外の衣類生産工場では、現地で新たな雇用が創出され、従業員の所得水準が向上しました。

しかしその一方で、衣類の製造過程における長期的な有害物質への暴露や、劣悪な労働環境による健康被害といった問題が顕在化しています。

また、意思に反して労働を迫られる強制労働によって、長時間の労働を強いられたケースも報告されており、記憶に新しい事例だと、2013年4月にバングラデシュで発生した「ラナプラザの悲劇」があります。

ラナプラザビルには商店や裁縫工場などが入居しており、多くの従業員が働いていました。事故前日にビル倒壊が起こりえる大規模の亀裂が発見されたにもかかわらず、ビルオーナーは警告を無視し、裁縫工場のマネージャーは従業員の避難を許可しませんでした。

翌日、ラナプラザビルは倒壊し、1138人が死亡、そして負傷者が2500人以上にものぼる大惨事となりました。

エシカルファッションの10の基準

エシカルファッションの推進団体である「The Ethical Fashion Forum」では、これらのアパレル産業の問題を解決し、持続可能な社会の実現に向けて10の基準を制定しました。

下の表はその内容です。

大量生産・大量消費・大量廃棄の「ファストファッション」に反対
生産する労働者の賃金・権利・労働環境の保護
サステナブルな生活を支える
有毒農薬や、化学物質の使用問題への取り組み
環境に配慮した素材を使用、もしくは開発
水の使用を最小限に抑える
リサイクル、エネルギーやゴミ問題への取り組み
ファッションの持続可能性を開発・推進
取り組みを報告し、解決策を発信
10動物の権利を保護

私たち消費者でも身近に取り組める項目がいくつかあり、消費者と生産者の両方の視点で定められた基準であることがわかります。

エシカルファッションの環境ラベル・認証マーク

あなたが購入する服が環境や人権に配慮してつくられたものかを確認するひとつの基準として、環境ラベルや認証マークの有無があります。

ここでは、エシカルファッションの実践に繋がる3つの環境ラベルと認証マークをご紹介します。

エコマーク

エコマークは、日本で唯一エコラベル運営団体と呼ばれる第三者機関による認証がされている環境ラベルです。

認証には「省資源と環境循環」や「地球温暖化の防止」、「有害物質の制限とコントロール」など、4つの環境評価項目の基準を満たす必要があり、製品の製造から廃棄までのライフサイクルにおいて、環境への負荷軽減や保全に貢献する商品のみ許認されるラベルとなっています。

OCS認証

OCS認証は、オーガニック繊維を含むあらゆる製品の製造から管理に対して認証を行い、原料調達から製品の完成までの製造履歴を追跡することで、その製品がオーガニック繊維でつくられたものであることを証明する認証ラベルです。

OCSに登録できるオーガニック繊維は、事前にオーガニック認証農場で生産された繊維のみであるなど、徹底した認証システムへの信頼性の高さから、2020年には8,500社以上の企業が認証を受けました。

国際フェアトレードラベル

国際フェアトレードラベルは、製品の原料調達時から消費までのサプライチェーンにおいて、「経済的基準・社会的基準・環境的基準」の3つの基準を満たしたものに許可される認証ラベルです。

具体的には、生産者への最低価格の保証や児童・強制労働の禁止、農薬や薬品の適正な使用および削減などです。

発展途上国や大企業と取引をする小規模の生産者に対して、より公平で公正な取引を促進するためのラベルとなっています。

私たちの身近なところでも、このようにファッションという形でサステナブルの実現へ貢献することができます。 製品が作られるまでの過程を知り、環境や人権に配慮した消費を行うことは、より良い世界の実現へと繋がるでしょう。

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