海洋プラスチックによる年間死亡数は何十万も…海の生物を守るために

いま、海が危ない。海洋プラスチック問題とは

ペットボトルやお皿などの容器、洋服から自動車まで、今やプラスチックは生活のありとあらゆる場面で使われています。

軽くて長持ちし、加工もしやすいため、製品そのものだけでなく、ビニールなどの包装材や果物のネットなどの緩衝材としても活用されています。ですが、その一方でプラスチック製品の多くは「使い捨て」にされており、利用後も処理されず、そのまま自然界に流出してしまうケースも多々見受けられます。

自然界に流出したプラスチック製品のほとんどは、河川に流されて最終的に「海」に流れ込みます。

こうして世界の海に流出したプラスチックごみは合計1億5,000万トン。現在も年間800万トンのペースで増え続けていると言われており、これを海洋プラスチック問題といいます。*

*出典:McKinsey & Company 2015(https://www.mckinsey.com/business-functions/sustainability/our-insights/saving-the-ocean-from-plastic-waste

2050年には、海は魚よりもゴミの量が多くなる?!

環境省の調べでは、このままのペースでプラスチックごみが増え続けた場合、「2050年には海は魚よりもゴミの量の方が多くなる」との統計が出ています。
海の中で増え続けるプラスチックごみによって、海の生態系にはすでに甚大な影響が出ています。
WWFジャパン*によると、海洋ゴミの影響で魚類をはじめ、海鳥やウミガメ、クジラなどの海洋哺乳類、約700種類に被害をもたらしており、このうちの92%がプラスチックごみの影響による被害だと推定されています。

*出典:WWFジャパン(https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html

海洋プラスチックがもたらす、深刻な海の動物への影響…

海に流されたプラスチックは、海の中の生物にさまざまな被害をもたらします。

具体的には、水中に取り残された漁網に絡まって身動きが取れなくなったり、ポリ袋などのプラスチック製品を餌と間違えて摂取したりすることで、最終的にその生き物を死に至らしめるケースもあります。

海に流されたプラスチックは、海底や波などで削られて小さくなります。特に直径5mm未満となったプラスチックの粒子や断片はマイクロプラスチックと呼ばれています。このマイクロプラスチックは小さくなっても自然分解されないため、「数百年間以上経っても残り続ける」と言われています。

2015年に行われた調査では、海鳥の90%がプラスチックごみを摂取していることがわかり、2050年までには地球上にいるすべての海鳥の99%が摂取すると推定されています。

身近にもこんな悲しい事例が……海遊館に保護されたウミガメ

2020年11月、高知県土佐清水市沖の定置網にアオウミガメが迷い込み、保護されました。
その後、大阪の海遊館に移送されましたが、体内にプラスチックごみが溜まっており、約1ヶ月ほど餌を食べられず、その間はレジ袋・包装容器などのプラスチックごみを排泄し続けました。
結果的にアオウミガメは約2ヶ月に渡って体内からプラスチックごみを排泄し続け、その合計重要は21gにもなりました。その間は餌を食べなかったり、食べたとしても与えすぎると消化器官が詰まってしまうため、飼育担当者は「アオウミガメの体力が持つだろうか」とかなり心配しながら世話を続けました。
搬入から約半年が経過した頃、ついにレントゲン撮影でもプラスチックの影は見られなくなり、すべてのゴミが排泄されたと確認できたそうです。

アオウミガメは海藻やクラゲを主食としていますが、海の中に浮かぶプラスチックごみを海藻やクラゲと思い込んで誤食してしまうと考えられています。

誤食されたプラスチックごみは、体内で消化されないまま消化器官に溜まっていき、臓器を傷つけたり、餌を食べられずに餓死したりしてしまうなど、海の生物の健康に大きな被害をもたらす危険性があります。

アオウミガメをはじめとしたウミガメが、特に海洋プラスチックごみの被害を受けていることが数多く確認されており、世界の国々でこの問題が指摘されています。

イギリスの大学の調査では、太平洋・大西洋・地中海の3海域で死亡した状態で見つかったウミガメ102匹のうち、すべての体内から廃プラスチックが発見されたと発表されています。

*参照元:海遊館(https://www.kaiyukan.com/connect/blog/2022/01/post-2243.html

*参照元:産経新聞(https://www.sankei.com/article/20210715-4CJCCJLA6FNJTDGQGNLIOBL6EI/

各国が急ぐ、プラスチックへの対策

こうした背景から、プラスチックが海の生き物に与える影響は非常に大きく、各国も対策を急いでいます。

さらに、恐ろしいことに、これらの海洋プラスチックゴミは、ウミガメや魚などをはじめとする多くの海の生物の命をも奪っています。
その数、なんと年間何十万にも上るという報告も。( 国連環境計画 : Assessing the impact of exposure to microplastics in fish

EU(欧州連合)では2021年7月、プラスチック性の使い捨て容器や食器に対して、市販や流通を禁止する規則が施行されました。日本政府においても「2030年までに使い捨てプラスチックを25%削減する」という目標を立てています。

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