日本で見られなくなるかもしれない、水族館の生き物たち

水族館では、海や川で暮らす生き物たちの生態系を楽しめるとともに、その悠々とした泳ぎの魚や愛らしい見た目の動物たちが、多くの人の心を癒しています。

しかし、現在、日本の水族館では「もう今後見られなくなるかもしれない生き物」がいるのを知っていますか。

この記事では、いま会っておきたい水族館の生き物たちと、その生き物たちが自然の中でどのような状況に置かれているのかについて、ご紹介します。

国内の水族館に1頭しかいない、ジュゴン

タイやオーストラリアなど温かく浅い海に棲息するジュゴンは、現在日本の水族館に1頭しかいません。

鳥羽水族館(三重県)にいる「セレナ」は、鳥羽水族館での飼育が36年超(2023年現在)と飼育記録世界記録更新中のジュゴンです。

ジュゴンの寿命は50~70年ほどとされていますが、絶滅危惧種にも指定されており、現在ではワシントン条約によって新たな輸入が禁止されています。 つまり、日本にジュゴンが1頭しかいないということは、これ以上の繁殖が不可能であるということを意味します。

水族館の人気者、イルカも実は…

水族館のイベントといえば、イルカショーを思い浮かべる人も少なくないのでは。

実は、イルカも今後国内の水族館で見る機会が減っていくかもしれないといわれています。

かつては、研究や治療目的などで飼育されていたイルカ。

しかし近年では、JAZA(公益社団法人日本動物水族館協会)がイルカの捕獲を禁止したり、誤って捕獲したイルカを海へ還すよう水産庁が義務付けたりするなどしたことで、新たなイルカを飼育するハードルが高くなっています。 学術的研究のための捕獲は水産庁の許可があれば可能なようですが、これもハードルが高いため、水族館のイルカは減っていくのではといわれています。

国内に3頭しかいない、ラッコ

かつて日本の多くの水族館にいたラッコも、最近では個体数が少なくなっています。

ジュゴンと同様に新たな輸入が禁止されていることや、国内のラッコは繁殖が難しい年齢になっているため、近い将来、ラッコが見られなくなるといわれています。

シャチは飼育下で寿命が縮む…

自然界で平均50年ほどの寿命とされるシャチは、飼育下で寿命が縮む可能性が指摘されています。

シャチは家族で暮らすことが一般的ですが、捕獲によって家族を失ったシャチは寿命が短くなってしまうようです。

現在、シャチはイルカと同様に学術目的以外の捕獲が禁止されているため、人工繁殖で増やすことが考えられていますが、個体数自体が少ないため、今後大幅に数が増える可能性は高くはありません。

日本でシャチが見られるのは、鴨川シーワールド(千葉県)と名古屋港水族館(愛知県)にいる、合計7頭。 世界でも合計57頭しか飼育されていない状況や、シャチの生態のことを考慮すると、今後新たな捕獲による飼育はあまり現実的ではないといえます。

水族館で海の生き物が見られなくなる、ということは…

ここまでにあげた生き物たちに共通しているのは、やはり自然界での個体数が減少していること。

必要以上の捕獲が非難されるのは当然のことですが、やはり考えなければならないのは「海の環境問題」について。

私たち人間の活動が、海で暮らす生き物の生活の場を奪っていることから目を背けてはならないでしょう。

近年特に問題となっている、温暖化や海洋プラスチック問題などは、直接的に海の生き物に影響を与えるだけではなく、私たち人間の暮らしにまで影響を及ぼし始めています。 水族館で海の生き物に出会うとき、その生き物の本来の暮らしや現状についても考えてみたいですね。

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