プラスチックは、加工のしやすさや耐久性に優れている特性から、私たちの生活に欠かせない存在になっています。しかし、近年では世界中でプラスチックによる地球温暖化や海洋汚染問題が深刻になっています。2050年には、海では魚よりもプラスチックゴミの量の方が多くなるといわれています。
海洋保護団体のOcean Conservancyの2015年の報告書によると、世界の海洋ゴミの半数以上は、アジアの国から排出されているといいます。
本記事では、なぜアジア諸国ではプラスチックゴミの排出が多いのか。また、アジア各国や
日本ではどのような取り組みが行われているのかを取り上げます。
目次
深刻化するプラスチックの環境問題
プラスチックは、石油由来の原料によって製造されるため生産や廃棄において二酸化炭素を排出させます。また、プラスチックは分解されにくい性質を持っており、分解されていないプラスチックが海に流れ出ることで、海洋汚染の原因になっています。
2018年に発表された国連環境計画の(UNEP)のSingle-use plasticsの報告書によると、日本のプラスチックゴミの廃棄量は世界で2位だとされています。
世界各国の状況
フィリピン
フィリピンの首都マニラにあるパシッグ川は、世界で最もプラスチックゴミによる汚染が深刻な川といわれています。パシッグ川から海に流れ出るプラスチックの量は、年間で6万5300トンもあります。
川は、大量の廃プラスチックに埋め尽くされ人が渡り歩けるほどです。米国科学振興協会(AAAS)によると、世界のプラスチックによる海洋汚染の原因となっている河川の28%がフィリピンにあると示されています。
アジア諸国で海洋プラスチックゴミが大量に出る原因
米学術雑誌Scienceによると、海洋プラスチックゴミの7割はアジア諸国が原因とされています。カンボジアを事例にアジア諸国の海洋プラスチックゴミの流出の原因について解説します。
カンボジアの首都のプノンペンでは、毎日3000トン以上のゴミが排出されています。しかし、プノンペンのゴミ集積所では約170万トンのゴミしか収容できず、排出されるゴミに対してゴミの埋立地が不足しています。
先進国では、プラスチックゴミはリサイクルされるか、エネルギーとして再利用されています。しかし、途上国のカンボジアでは、ゴミ焼却場やリサイクルが可能な施設の設備が整っていません。回収されないプラスチックゴミは、最終的にメコン川を通じて海に流出しています。
世界各国のプラスチックゴミ問題に対する施策
カンボジア
カンボジアでは、2018年からスーパーマーケットのレジ袋の有料化が施行されました。レジ袋は、1枚当たり400リエルで、日本円でいうと約10円となっています。レジ袋の有料化の政策により、レジ袋を利用する人は5割以上減少したといわれています。
中国
中国の国家発展改革委員会は、2020年1月にプラスチック問題に対する新たな政策を発表しました。新しい政策では、国内でのプラスチックゴミ発生を抑制するために、使い捨てプラスチックの製品などの生産や使用を禁止することになっています。
先進国が途上国に対して取り組めること
海洋プラスチックゴミのほとんどは、アジア諸国が原因とされています。その中でもプラスチックゴミのリサイクル施設や焼却場が整っていない途上国が多い傾向にあります。プラスチックゴミは地球規模の問題であり、解決するためには先進国と途上国が一体となって取り組む必要があります。
バイオプラスチックを研究する米ミシガン州立大学の化学工学者ラマニ・ナラヤン氏は、先進国でプラスチックのリサイクルをしたとしても、海に流出するプラスチックゴミの量は変わらないため、先進国がそれらの国々に行き、協力して取り組む必要があると指摘しました。
途上国のプラスチックゴミの環境問題について取り組む企業を紹介します。
株式会社グーンでは、フィリピンのセブ市において様々な廃棄物が混合されたまま埋め立てられてしまっている環境問題に着目しました。
これまで処理されていなかった廃プラスチックから環境負荷が低いフラフ燃料を製造して、現地のセメント企業へ販売をしています。
世界全体で解決するべき環境問題
プラスチックゴミによる問題は、日本だけではなく世界中で問題視されています。世界的な環境問題に取り組むためには、リサイクルをする技術がない途上国に対して、協力することが重要になります。
先進国は、培った処理技術を生かしてプラスチックゴミの環境が深刻なアジアの途上国に対して支援を行うことがプラスチックゴミの環境問題を解決することができます。