アニマルウェルフェアとは?動物愛護との違いや、日本の現状・取り組み

「アニマルウェルフェア」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

この概念は、欧米を中心に世界中で広がりを見せています。

しかし、日本では認知度がまだ低く、約9割の人が「アニマルウェルフェア」の言葉を知りません。

また、取り組みも進んでいないのが現状です。

アニマルウェルフェアとは

「アニマルウェルフェア」は、動物の幸福度を重視した考え方で、動物が人間の保護や管理下に置かれる場合において、その動物が本来の習性や行動を発揮できるような環境を提供し、健康的で精神的な苦痛を伴わない生活が送れるよう飼育することです。
欧米諸国では、動物の利用に際しての主流な考え方として定着しており、アニマルウェルフェアにもとづいて動物の飼育や取り扱いに関する法律や規制が整備されています。

アニマルウェルフェアとは

アニマルウェルフェアの基本的な指針として、「5つの自由」が提唱されています。
・飢えや渇き、栄養不良からの自由
・恐怖や苦悩からの自由
・物理的、熱の不快さからの自由
・苦痛、傷害、疾病からの自由
・動物本来の自然な行動を発現する自由

アニマルウェルフェアに関する国際的な取り組みの中心には、国際獣疫事務局(OIE)があります。
国際獣疫事務局は、科学的知見にもとづいてアニマルウェルフェアのルールを定めており、日本を含む世界182か国と地域が加盟する政府間機関です。
加盟国は、国際獣疫事務局が策定したガイドラインにもとづいてアニマルウェルフェアに関する取り組みを進めていますが、各国の取り組みレベルには差があるのが現状です。

動物愛護とアニマルウェルフェアとの違い

動物愛護とアニマルウェルフェアは、どちらも動物の福祉を考える取り組みですが、アプローチの仕方や視点に違いがあります。
動物愛護は、言葉の通り「動物を愛して護る」ことが目的です。
人間側からみた視点で、動物に対する思いやりや共感を育むことが重視されています。

一方、アニマルウェルフェアは、動物の立場に立って幸福度を向上させることを目的としています。
アニマルウェルフェアは、科学的な視点から動物が健康かつ快適な生活を送るためのニーズを満たすことを重視しているのです。

日本は遅れている?アニマルウェルフェアの現状と世界との違い

日本では、アニマルウェルフェアに対する取り組みがまだ発展途上にあるといわれています。
世界的にみると、アニマルウェルフェアの考え方はすでに広く浸透しており、動物の飼育や取り扱いに関する法規則やガイドラインが厳格に定められている国も多くあります。

日本におけるアニマルウェルフェア

農林水産省の定めた「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」では、畜産生産者向けのアニマルウェルフェア改善の実践項目がまとめられていますが、あくまで推奨であり、強制力はありません。
強制力はないものの、飼養管理指針をもとにした認証制度として「JGAP認証」や「有機JAS認証」、「持続可能性に配慮した鶏卵・鶏肉JAS認証」などがあります。

また、日本初の本格的なアニマルウェルフェアの取り組みとして、アニマルウェルフェア畜産協会の農場・食品認証(乳用牛・肉用牛)があります。
さらに、山梨県による「やまなしアニマルウェルフェア認証制度」やエコデザイン認証センターによる「採卵鶏の飼養方法の認証制度」など、地域や分野ごとに少しずつ関連制度が増えてきているのが現状です。

海外のアニマルウェルフェア

欧州連合(EU)では、アニマルウェルフェアにおける先進的な取り組みで知られています。
1997年にアムステルダム条約を通じて、アニマルウェルフェアに関する法的規制を導入して以来、EU加盟国では動物の飼育や取り扱いに対して独自に厳しい基準を設けています。

例えば、2012年には採卵鶏をバタリーケージと呼ばれる狭いケージに閉じ込めて飼育する方法が禁止され、自然な行動ができる飼育方法が義務付けられました。
また、欧州連合ではアニマルウェルフェアの改善を行う畜産生産者に対して金銭的な支援を行う制度も整備されています。

法的基準は最低限のラインとして設けられており、それを上回る高い水準のアニマルウェルフェアを実現するためには、民間認証が重要な役割を果たしています。

国内外で抗議の声が上がった東京オリンピック

2020年の東京オリンピックでは、アニマルウェルフェアの観点から、国内外で一部抗議の声が上がりました。
2012年のロンドンオリンピックと2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、バタリーケージや豚を狭い檻に拘束する妊娠ストールなどを使用して生産された卵や豚肉の使用が禁止されていました。
しかし、東京オリンピックでは、このような飼育方法で生産された食材の使用が許可されたため、アメリカをはじめとした元オリンピック選手10人が連名で、ストレスを与えて飼育された畜産物は栄養面で偏りが生じ、選手たちのパフォーマンスにも悪影響があるとして、アニマルウェルフェアを考慮した食材を使用するよう求めましたが、大会運営側は要請を受け入れなかったのです。

消費者の意識が変われば国内でもアニマルウェルフェアが広がるはず

日本でアニマルウェルフェアの取り組みが進まない理由の一つとして、導入に伴うコストの高さが挙げられます。
消費者が動物福祉の重要性を理解し、現状を知ることで、アニマルウェルフェアを重視した製品を選ぶようになれば、企業もそれに応じて方針を変えていく可能性が高まるでしょう。

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