ネイチャーポジティブを実現するための街づくりとは?~都市と自然の共生を目指して~

都市化が進み、自然との距離が広がる現代において、都市と自然の共生はますます重要なテーマになっています。
そしてその鍵を握るのが、ネイチャーポジティブを実現する街づくりです。

ネイチャーポジティブとは何か?

「ネイチャーポジティブ」という言葉をご存知でしょうか。
近年、環境問題への関心が高まる中、世界中で注目されているキーワードです。
ネイチャーポジティブ(Nature Positive)とは、人間の活動によって失われてきた自然や生物多様性をこれ以上減らさず、むしろ回復させて「自然をプラスに転じる」ことを目指す考え方です。

具体的には、2020年を基準として、2030年までに自然の損失を食い止め、2050年までに完全な回復を達成することを目標としています。
これは、気候変動対策で「カーボンニュートラル(ネットゼロ)」が掲げられているのと同様に、生物多様性や自然資本の分野でも「損失を止めてプラスに」という目標が必要だという世界的な認識が背景にあります。

ネイチャーポジティブは、「我慢しながら自然を守る」のではなく、「自然も人間も豊かになる」ための目標です。
種や生態系、自然のプロセスの健全性や多様性を高め、持続可能な社会を実現することが求められています。

街づくり・都市とネイチャーポジティブの関係

私たちが暮らす都市は、経済活動や生活の中心地ですが、その一方で自然環境に大きな影響を与えてきました。
都市化が進むにつれ、緑地や水辺は減少し、多くの生き物の生息地が失われてきました。
また、都市生活が自然と切り離されることで、私たちは自然の恵みを実感しにくくなっています。

しかし、都市には多くの人が集まり、インフラや政策の影響力が大きいという特徴があります。
つまり、都市の街づくりを変えることで、自然の回復や生物多様性の向上に大きな効果が期待できるのです。

ネイチャーポジティブな都市は、人々の健康や福祉、経済活動にも良い影響をもたらします。
都市の中で自然を取り戻すことは、未来の持続可能な社会づくりに不可欠な要素なのです。

ネイチャーポジティブを実現するための街づくりの取り組み

実際にどのような取り組みが行われているのでしょうか。

1. 緑化・ビオトープの推進

都市に緑を増やすことは、自然を回復させる第一歩です。
公園や街路樹の増加、屋上や壁面の緑化など、さまざまな方法で都市に緑を取り戻す取り組みが進められています。
また、ビオトープ(生き物が生息できる空間)を設置することで、都市の中に多様な生物が住める環境をつくれます。

2. 生態系ネットワークの構築

都市の中の公園や河川、緑地をつなぎ、「緑の回廊」をつくる取り組みも重要です。
これにより、生き物が移動できる環境が整い、都市と自然の境界が緩和されます。
生き物と人が共生できる空間を目指すことで、都市の生物多様性が高まります。

3. 水辺の再生・雨水活用

都市の水辺(河川や池、水路)を自然に近い形で再生することも、ネイチャーポジティブな街づくりの一環です。
また、雨水を貯留・浸透させて活用することで、都市のヒートアイランド現象や洪水リスクを軽減できます。

4. 持続可能なインフラ整備

建物や道路の整備においても、低炭素・自然素材を活用することが求められています。
公共交通の充実や自転車道の整備により、自動車依存を減らし、環境負荷を低減することも重要なポイントです。

5. 地域コミュニティとの協働

住民や企業、自治体が協力して、地域の自然を守り育てる活動も広がっています。
里山保全や市民農園、清掃活動など、地域の自然を活かした取り組みは、ネイチャーポジティブな街づくりに欠かせません。
また、地域の自然を活かした観光や教育プログラムも実施されています。

6. 産業・経済活動との連携

企業による自然資本の保全・回復活動も注目されています。
社有地の緑化やサプライチェーンでの環境配慮、グリーンインフラやエコツーリズムなど、自然を活かした新たなビジネスの創出も進んでいます。

国内外の先進事例

実際に、国内外でネイチャーポジティブな街づくりを推進する先進事例があります。

国内事例

・東京都「みどりの東京計画」
公園や緑地の拡大、屋上緑化の推進など、都市に緑を増やす取り組みが進められています。

・横浜市「生物多様性都市ヨコハマ戦略」
ビオトープネットワークの構築など、生き物が住みやすい環境づくりを目指しています。

・大阪市「水都大阪」構想
河川や運河を活用した水辺再生プロジェクトが進められています。

海外事例

・シンガポール「シティ・イン・ア・ガーデン」
都市全体を緑で包み込む政策により、自然と都市が調和した街づくりが実現しています。

・ロンドン「グリーンインフラ戦略」
雨水管理と緑化を組み合わせた都市計画で、自然と共生する都市を目指しています。

私たちにできること

ネイチャーポジティブな街づくりを実現するためには、一人ひとりの行動が大切です。
自宅や職場での緑化、地域活動への参加、環境配慮の消費行動など、身近なところから始められます。

また、企業や自治体との協働も重要です。
自然を守り育てる活動に積極的に参加し、ネイチャーポジティブな社会を目指しましょう。

未来の世代のために、今から始める街づくり。
自然と共生する持続可能な都市を、みんなでつくっていきましょう。

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