地球の遠い南太平洋に浮かぶイースター島。
その海辺には、古代ポリネシア人が築いた巨大なモアイ像がいくつも立っています。
高さ4〜5m、重さ20トンを超えるものもあり、中には高さ20m、重さ90トンの巨大な像も存在します。
しかし、地球温暖化の影響で、海面上昇や干ばつ、火災などがモアイ像を脅かしているのをご存じでしょうか。
本記事では、「モアイ像が地球温暖化でなくなる?」というテーマをもとに、現在のリスクと保全の取り組みについて分かりやすく解説します。
目次
モアイ像ってどんな像?今も海辺で立っているあの顔
イースター島(正式名:ラパヌイ)は、チリ本土から約3700km離れた孤島です。
1722年にオランダの船が発見し、その日が復活祭だったことから「イースター島」と名付けられました。
面積は約163.6平方キロメートル、人口は約7,000人で、原住民の文化や歴史が色濃く残る島です。
イースター島最大の魅力は、約900体のモアイ像です。
これらの像は先祖の霊を象徴し、島民にとって重要な存在。
作り方や移動方法、なぜ造られたのかについては今も多くの謎が残っています。
平均4〜5m、重量20トン前後のモアイがほとんどですが、中には高さ20m、重量90トンの超巨大モアイもあり、その迫力は想像を超えます。
地球温暖化がモアイ像に与える脅威とは?
モアイ像は、海岸沿いや台座(アフ)の上に立っているため、風や雨、波の影響を受けやすくなっています。
さらに、柔らかい石で作られている像もあり、長い年月で自然の力によって少しずつ風化してきました。
しかし近年は、地球温暖化による海面上昇や干ばつ、集中豪雨、さらには山火事など、人間活動と気候変動が複合してモアイを脅かしています。
では、具体的にどんなリスクがあるのでしょうか。
海面上昇で水没!?波に押されるモアイ
世界遺産に登録されているラパ・ヌイ国立公園の一部は、2080年までに海面上昇の影響を受ける可能性があると報告されています。
沿岸部への海水の浸水により、モアイ像を含む少なくとも51の文化遺産が被害を受ける可能性があります。
ハワイ大学マノア校の研究チームは、波浪シミュレーションを行い、浸水予想図を作成。
その図を島の地図データに重ねることで、どの文化財がリスクにさらされるかを確認しました。
もし海面上昇が進めば、台座や像の下部が浸水し、風化や崩壊のリスクが高まります。
山火事によってぼろぼろに
2022年10月、ラパ・ヌイ島で山火事が発生し、島に点在する約1,000体のモアイのうち、数百体が「修復不可能なダメージ」を受けたと現地政府が発表しました。
焼けたモアイの表面は過去の火災よりも損傷が大きく、石の内部にひびが入っている可能性も指摘されています。
雨が降れば、ひび割れた石が崩壊するリスクもあります。
この火災は、気候変動や人間の活動とともに、モアイを脅かす要因の一つです。
また、干ばつによる植生の減少で土壌が固定されにくくなり、風や雨で浸食が進みやすくなります。
塩害や湿気の変化も、石材のひび割れや欠けを助長します。
モアイを守るための今後の対策
世界遺産を守るために、国際的な機関や現地の取り組みが進められています。
国連環境計画(UNEP)などの報告書では、世界遺産や観光業が気候変動で危機にさらされると警告。
モアイ像をはじめとした文化財を守るには、地球温暖化を2℃未満に抑えるパリ協定の目標達成が重要とされています。
また、観光業と自然資源への影響を分離する政策や、民間部門の関与、観光客の行動変革も効果的です。
さらに、文化財を登録する前に、気候変動による劣化リスクを評価することも勧告されています。
モアイ像の未来を守るには
モアイ像が「完全に消える」とはまだ言えませんが、海面上昇や干ばつ、火災などのリスクが確実に高まっています。
温暖化の進行を抑えつつ、文化財保全の取り組みを強化することが、モアイの未来を守るカギです。
私たちにできることは、気候変動への関心を持つこと、文化遺産保護に目を向けること。
遠く離れた南の島のモアイ像も、自然と文化をつなぐ行動で未来を守ることができるのです。

