環境問題への意識の高まりから、脱プラスチックへの取り組みが積極的に行われている現代。
脱プラスチックへの取り組みが加速した背景には、一体どのような要因があったのでしょうか。
この記事で、世界中で脱プラスチックへの取り組みの加速した背景から、近年、プラスチックの代替として注目されている、次世代の新素材について取り上げます。
目次
脱プラスチックへの取り組みが加速した背景
脱プラスチックへの取り組みが加速した背景のひとつには、2015年の国連サミットで採択された、持続可能な世界を実現するために掲げられた目標であるSDGs（持続可能な開発目標）があります。
テレビやインターネットなどで、鼻にストローが刺さったウミガメや、漁網が体に巻き付いて身動きが取れなくなったアザラシの映像など、ご覧になったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
世界ではそのような海洋ごみ問題だけでなく、「マイクロプラスチック」や「地球温暖化」というような、直接、もしくは間接的にプラスチックに起因した環境問題が顕在化しています。
注目されている新素材の開発
そのような背景から急務となっている、プラスチック代替素材の開発。
ただ、プラスチックのように汎用性や耐久性を有しており、なおかつ安価で大量生産が可能である素材は、まだ開発されていないのが現状です。
しかし、製造コストや耐久性といった問題はあるものの、世界では徐々にプラスチックに代わる新素材の開発が進んでおり、実際に実用化されている素材もあります。
脱プラスチックへ貢献する、次世代の新素材3選
プラスチックに代わる素材として実際に実用化され、既に私たちの生活へも導入されている新たな素材をご紹介します。
バイオマスプラスチック
原料に、トウモロコシやサトウキビといった生物由来の資源（バイオマス）を用いて製造されるプラスチックを、バイオマスプラスチックといいます。
バイオマスプラスチックであれば、焼却時のCO２排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を実現することができるのです。
焼却時にバイオマスが排出するCO２は、そのバイオマスが成長する過程で吸収したCO２であることから、大気中の二酸化炭素の濃度には影響を与えません。
また、トウモロコシやサトウキビなどの、非可食部を主な原料として製造されるため、私たちの食生活への懸念もないのです。
日本政府は、プラスチックの資源循環を推進するための戦略である「プラスチック資源循環戦略」において、2030年までに、このバイオマスプラスチックを約200万トン導入すると発表しています。
生分解性プラスチック
生分解性プラスチックとは、使用後に、微生物の働きによってCO２と水に分解されるプラスチックで、「プラスチックごみ」や「マイクロプラスチック」などの環境問題を解決する新素材として注目されています。
海に流れた海洋ごみは、海洋生物への影響のみならず、私たちの食生活にも影響を及ぼします。
劣化や紫外線によって細かく砕けたプラスチック（マイクロプラスチック）を海洋生物が摂取することで、その海洋生物を食べる私たちも、間接的にそのプラスチックを摂取することになります。
生分解性プラスチックであれば、最終的には分子レベルでCO２と水に分解されるため、このようなマイクロプラスチックの発生を未然に防ぐことができるのです。
生分解性プラスチックは、自然分解されることが前提で製造されるため、耐久性が求められる製品への使用には適しておらず、「レジ袋」や「ストロー」といった、非耐久財で不法に廃棄されやすい、使い捨て製品などへの使用に適しています。
LIMEX（ライメックス）
LIMEXは、石灰石を主原料にして開発された、プラスチックや紙の代替としても注目されている素材です。
主原料である石灰石は、枯渇リスクの低い鉱物資源であり、日本では自給率100％だといわれています。
また、LIMEXは森林資源や水をほとんど使わずに製造することができ、焼却時のCO２排出量においても、石油由来プラスチックと比べ、約58％削減することが可能です。
その他にも、高い耐久性と防水性、そして様々な形状に加工することができることから、食品容器や日用品、バッグなどに用いられています。
再生利用の側面においてもLIMEXは優れており、LIMEXの製造工場では、製造過程で発生したLIMEXの端材を回収し、新たな製品に再生利用するなど行っています。
地球の未来のために——プラスチック代替素材の可能性
脱プラスチックへの動きは、持続可能な世界を実現するためには不可欠であり、今後もさらにその勢いは増していくでしょう。
そのような背景から、必然的にプラスチックに代わる新素材の開発は進み、その市場規模は年々拡大していくことが推測できます。
既に私たちの生活にも普及し始めている、次世代の新素材。
そのような地球にやさしい素材を選択することは、私たちの未来を守ることにも繋がるでしょう。
