2021年3月に世界経済フォーラムより発表された「ジェンダーギャップ指数 2021」において、経済分野における日本のランキングは153か国中117位と昨年より2つ順位を下げており、依然として課題の残る結果となりました。
近年では、政府による男性の育休休暇取得の積極的な推進や、男女別の賃金や管理職比の開示義務化を検討するなど、ジェンダーギャップの解消に向けた取り組みが強化されています。
この記事では、日本社会で働く女性が抱える「マミートラック」について取り上げます。
目次
マミートラックとは
マミートラックとは、子育てをしながら働く女性が、本人の意思とは関係なく責任の軽い仕事を任せられ、昇進や昇給の機会を失うことを指す言葉です。
この言葉は1988年に、当時NPOカタリス代表であったフェリス・シュワルツ氏が企業に対し、「仕事と家庭」の両立を望む女性をサポートする体制を整備することを求めたことにより名付けられました。
経済分野におけるジェンダーギャップの現状
厚生労働省の女性の活躍推進に向けた報告書をもとに、日本の経済分野におけるジェンダーギャップの現状を数値データでご紹介します。
1.採用の現状
平成22年度雇用均等基本調査によると、新卒採用に占める女性割合において、「女性採用枠なし」としている企業が全体の40%以上に上ることが報告されています。
また、17.8%の企業が女性の採用率が40%未満と回答しており、女性よりも男性を採用する企業が多いということが現状となっています。
2.女性管理職の現状
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、100人以上の従業員を雇用する企業の場合、女性の管理職比率は以下のようなデータとなっています。
役職 | 割合 |
課長級以上 | 7.5% |
部長級 | 5.1% |
課長級 | 8.5% |
係長 | 15.4% |
この水準は国際社会においても低い水準となっており、米国の女性管理職割合が43.7%であることを踏まえると、日本のジェンダーギャップの深さの顕著な例であるといえます。
マミートラックの問題点
具体的に、マミートラックによる問題点とはどういったものがあるのでしょうか。
1.キャリア形成が困難
子育てによって転勤や残業などが制限されると、会社としても責任度が高い基幹的な業務を任せることが困難となります。
そのような経緯から、任せられる業務がデータ入力や書類作成といった補助的なものが中心となってしまい、昇進や昇給などの機会損失へと繋がります。
2.モチベーションの低下
本人が望まない状況で、上記のような業務を割り当てられる日々が続くと従業員のモチベーション低下へと繋がります。
子育てをしていない同期や後輩などが徐々にキャリアを形成していくなかで、自分だけ補助業務を任せられることにストレスを感じ、転職してしまうといった人材の流出へと繋がります。
企業の課題と対策
1.社員のキャリアプランを把握
従業員によって、今後のキャリアプランは異なります。子育て中であっても責任度の高い業務に関わりたい人もいれば、子育て中は事務作業など業務で無理なく働きたい人もいます。
子育て中であることを理由に、本人の意思を確認せずに業務の幅を狭めてしまうのでは無く、事前に今後のキャリアプランや要望を確認したうえで、今後の配属を検討することが望ましいでしょう。
2.福利厚生の浸透・充実
産休や育休といった福利厚生を社内で周知し、子育てへの理解を深めることで、子どもを持つ従業員が働きやすい環境を整えることが大切です。
また、男性の育休取得の積極的な推進や、社内への託児所の設置など、社内に子育てがしやすい雰囲気を浸透させることが必要です。
3.制度の再整備
子どもの事情でどうしても勤務が難しい場合に備えて、リモートワークやフレックス制度、時短制度などを再整備する配慮も必要です。
現状の法令でも、3歳未満の子どもがいる場合、1日の所定労働時間が6時間以下ではない従業員は短時間勤務制度を利用することができます。
ただ、3歳に達したからといって子どもが手から貼られる訳ではないので、3歳以上であっても時短制度が利用できるような制度を再整備するなどの配慮が必要でしょう。