クジラは地球環境のなかでも重要な役割を果たしていることを知っていますか?
クジラの個体数を守ること、あるいはかつてのように多くのクジラが生息する環境をつくることは、クジラや海の環境のみならず、私たち人間や地球の未来にも良い影響を与えるのです。
この記事では、クジラを取り巻く環境の現状と、クジラが地球で果たす大きな役割についてみていきます。
目次
クジラの数は増えている?減っている?
クジラの数は、種類によって増加しているものもありますが、全体的には減少しています。
19世紀から20世紀にかけて、クジラは食用や油脂の採取のために乱獲され、その結果、多くの種が絶滅の危機に瀕しました。
1970年代以降、国際的な保護条約が締結され、クジラの乱獲は減少しました。その結果、一部の種では個体数が回復しつつあります。
例えば、ザトウクジラは、1960年代には世界中で約1万頭しか残っていませんでしたが、現在では約25万頭にまで回復しています。また、シロナガスクジラも、1960年代には世界中で約1万頭しか残っていませんでしたが、現在では約3万頭にまで回復しています。
しかし、実際には、依然として多くの種が絶滅の危機に瀕しています。
例えば、シロナガスクジラは、現在でも南半球におけるもともとの生息数の約1%しか残っていません。
このようにクジラの個体数は減少しており、クジラを守るためには国際的な協力が必要なのが現状といえるでしょう。
クジラが生態系の中で果たす重要な役割、「ホエールポンプ」とは
ホエールポンプ(Whale pump)は、海洋における生態系の一部として機能する重要なプロセスです。これは、クジラが海中で餌を摂取し、栄養を吸収した後に排出する糞や尿によって、海洋中の栄養物の循環を促進する現象を指します。
クジラが食べ物として摂取したプランクトンや魚などの栄養物を吸収し、クジラの体内で消化・代謝された後に排泄されます。この排出物は、海中に栄養素を供給し、さまざまな生物の生態系に影響を与えます。プランクトンや魚などの生物がこれらの栄養物を摂取し、成長や繁殖を促進することで、生態系全体の豊かさを支えています。
また、ホエールポンプは海洋の二酸化炭素(CO2)吸収にも関与しています。クジラが餌として摂取した栄養物は、クジラの体内でCO2と結びついて排泄されます。このプロセスにより、クジラはCO2を海洋に取り込み、一種の炭素吸収ポンプとなります。なんと、クジラは海中で「森林」の役割を果たしていたのです。
このように、ホエールポンプは、クジラの生態学的な役割が生み出す重要な生態系サービスの一つとされており、海洋生態系のバランスと持続可能性に貢献しています。
つまり、クジラの個体数が減少すると、こうしたバランスが乱れ、海洋環境や気候変動に悪影響を及ぼす可能性が高いのです。
海に浮かぶプラスチックが、クジラや海の生き物を脅かしている
2018年にインドネシアで座礁したクジラの死体解剖時に、腹部からプラスチックのコップ115個、ペットボトル4個、レジ袋25個、ビーチサンダル2足が発見されたという報告がありました。これは、海洋に廃棄されたプラスチックがクジラによって誤って摂取された例の一つです。
こういった報告は決して珍しいものではなく、海洋生物の腹部からプラスチックが見つかったり、体にからまり身動きが取れなくなってしまったり、私たち人間の手から離れたプラスチックが生き物たちの命を奪っているのです。
また、目に見える大きなプラスチックだけではなく、小さくなり海を漂うマイクロプラスチックも、生き物の命に悪影響を与える原因の1つ。マイクロプラスチックは、小さなプラスチックの粒子であり、海洋環境に広く存在しています。クジラなどの生き物がこれらのプラスチックを誤って摂取することで、消化器系の問題や栄養吸収の妨げにつながる可能性が懸念されています。さらには、マイクロプラスチックが吸着した有害物質(POPs)がクジラの体内に蓄積する可能性もあり、クジラの健康状態や生殖能力が低下するなど長期的にも大きな悪影響となりえます。
クジラを守ることは、地球の未来を守ること
かつては捕鯨によって脅かされていたクジラの命。
近年では、プラスチックなど人間が排出するごみによって、やはり多くのクジラの命が危険にさらされているのです。
生命は、単体で存在しているものではありません。クジラも人間も、海も森も、すべてが循環していることを決して忘れてはならないのです。
地球環境を守ろう…というと自分ひとりではどうしようもない、あるいは自分ひとりが無視しても大した影響はない、と考えてしまうかもしれませんが、決してそのようなことはありません。
私たち一人ひとりが少しずつ変わることで、確実に地球の未来は変わっていきます。
同じ地球に暮らす動物や自然のことを、いま少しでも振り返ってみませんか。