現代では、育児を楽しみ積極的に取り組む男性を「育メン/イクメン」と呼ぶなど、今では男性の育児参加が一般的なものとなりました。
2015年に採択された国際目標、SDGs(持続可能な開発目標)では、家庭と仕事がよいバランスで保たれている働き方、「ディーセントワーク」の実現が目標のひとつとされています。
この記事では、ディーセントワークの実現に必要な要素である、男性育休の概要から、日本の育児休業の現状について解説します。
目次
労働者の味方・育児・介護休業法とは
会社員として働いていると、子どもが生まれたときや親族の介護が必要となった際など、育児や介護と、仕事のバランスをとることが難しくなることがあります。
日本では1992年に、そのような育児・介護に関わる労働者の支援を目的とした「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、育児介護休業法)」が施行されました。
育児介護休業法では、休業しやすい労働環境の整備や、育児・介護に関わる労働者の支援制度などが盛り込まれており、2021年の法改正では、男性の育休取得の促進に向けた枠組みの創設などがあらたに追加されました。
男性育休の現状
2021年に厚生労働省が公表した「雇用均等基本調査」によると、2020年の男性の育休取得率は12.65%と、前年の7.48%から大幅に上昇しました。
しかし、女性の育休取得率が80%以上であることを考慮すると、その水準はまだ低いレベルにあると考えられます。
このような背景には、育休の取得を理由にした嫌がらせ、「パタニティ・ハラスメント(以下、パタハラ)」があるとされています。
厚生労働省の調査によると、育休を利用しようとした男性のうち、26.2%がパタハラの被害にあったと回答しており、42.7%が育休の取得を諦めたとされています。
法改正された育児・介護休業法の3つのポイント
先述の法改正された育児・介護休業法は、2022年4月から2022年10月以降にかけて段階的に施行されていく予定です。
注目するポイントとしては、複数の項目が「努力義務」から「義務化」へと改正され、また男性の育休取得を推進するあらたな枠組みが追加されたことです、
以下、法改正による5つのポイントです。
内容 | 従来 | 改正後 |
企業から従業員への育児休業の周知 | 努力義務 | 義務化(2022年4月~) |
企業から従業員への育児休業取得の推奨 | 努力義務 | 義務化(2022年4月~) |
男性の育児休業制度 | パパ休暇 | 出生時育児休業(産後パパ休暇)制度の新設(2022年10月~) |
育児休業の分割取得 | 不可 | 2回(2022年10月~) |
有期雇用契約者の育児休業取得 | 不可 | 可能 |
今回、改正された内容で男性の育休取得に関わるポイントとしては、「出生時育児休業(産後パパ休暇)」があります。
従来のパパ休暇では、法律で定められている特別な事情がない限り、取得できる育休は子どもが1歳になるまでの間で連続した期間の1回のみとなっています。
新設された出生時育児休業は、通常の育休とは別枠の育休制度となっており、パパ休暇とは以下の点に違いがあります。
・出生後8週間以内は4週間まで育休の取得が可能
・申請時に申し出ると、分割して2回まで取得することが可能
・育児休業の申請期限が2週間前まで(通常の育休は1ヶ月前まで)
・事前に合意した範囲であれば、休業中の就業が可能
このように、出生時育児休業ではパパ休暇と比べて取得申請の難易度が下がり、分割取得も可能であるなど、ライフバランスに合わせて柔軟に育休取得ができるようになりました。
なお、出生時育児休業が新設されたことから、従来のパパ休暇は廃止となります。
男性の育休取得をするためのポイント
男性の育休取得に関わらず必要なことですが、一定期間の休業を申請する際、今後の業務に悪影響を与えないためには、事前にいくつかの準備をしておく必要があります。
1.上司や部下、同僚と良好な関係を築いておく
厚生労働省のイクメンプロジェクトによると、育休を取得しなかった男性の27.3%が、「職場が育休を取得しづらい雰囲気であった」と回答しています。
これは企業のワーク・ライフ・バランスへの理解が不足していることが、ひとつの要因として考えられますが、事前に職場内で良好な関係を築いておくことで、他の従業員からの理解が得られやすくなり、安心して育休を取得できるようになります。
2. 引継ぎをきちんと行う
育休を取得できた場合においても、きちんと引継ぎができていなければ、職場への負担が大きくなりますし、職場復帰した際の評価を下げる原因となってしまう可能性があります。
そのため中長期間の休業を取得する際は、事前にしっかりと引継ぎを行うことが大切です。
ここまで育休制度の概要から、男性の育休取得の現状について解説しました。
出産後は母体の回復に専念する必要があり、特に産後から8週間は全力で母体の休養に努める必要があります。
そのような女性の産後ケアには配偶者の協力が不可欠であるため、企業は育休を取得しやすい環境や社内制度を整備し、男性は育休の取得に備えた準備をする必要があるでしょう。