最近耳にすることの増えた、生分解性プラスチック。
プラスチックといえば、地球環境保護の観点から、生産量・使用量を削減する動きが近年活発化していますが、この新しい「生分解性プラスチック」とはどのようなものなのでしょうか。
今回はその特徴と可能性について見ていきます。
目次 [hide]
生分解性プラスチックとは
プラスチックは、軽量かつ耐久性があり、多くの製品に利用されています。
私たちの暮らしを見渡しても、プラスチックはいたるところにあるのではないでしょうか。
そんな身近な素材であるプラスチックですが、自然界に長期間残留することで環境に悪影響を与えてしまうことが近年大きな問題となっています。
海や土に捨てられてしまったプラスチックは、自然分解されるまでに数十年から数百年かかるといわれており、しかも完全には分解できず、ごく小さなマイクロプラスチックとして生き物への影響を与えてしまうことも懸念されています。
今回取り上げる生分解性プラスチックは、微生物の働きによってプラスチックを分子レベルまで分解し、二酸化炭素と水となることで自然へと還るもの。通常のプラスチックと同じように使え、かつ地球環境にも優しいことから、いま注目されているのです。
生分解性プラスチックの定義と特徴
生分解性プラスチックは、微生物によって分解されることで自然界に還ることができるプラスチックです。従来のプラスチックは、約100年以上の時間が経過しても自然界に残留するため、環境に悪影響を与えてしまうことが問題視されてきました。しかし、生分解性プラスチックは、特定の条件下で微生物によって分解されることで、二酸化炭素や水などの自然界の物質へと還元されるため、従来のプラスチックと比べ地球に優しいといわれています。
生分解性プラスチックの種類と原料
生分解性プラスチックには、主に以下の3つの種類があります。
・石油由来生分解性プラスチック
・バイオマス由来生分解性プラスチック
・合成由来生分解性プラスチック
石油由来生分解性プラスチックは、石油を原料としているため、環境に対する負荷が大きく、バイオマス由来生分解性プラスチックや合成由来生分解性プラスチックに比べて、生分解性が低いという課題があります。一方、バイオマス由来生分解性プラスチックは、植物由来の原料を使用するため、環境負荷が低く、生分解性が高いという特徴があります。
生分解性プラスチックには一定の基準があります。分解性や安全性などをクリアした製品のみが「生分解性プラスチック」となります。
生分解性プラスチックにはどんな製品がある?
生分解性プラスチックは、実は私たちの暮らしの身近なものにも使用されています。
通常のプラスチックと同様に加工・使用することができるため、一見その違いはわかりませんが、その分解の仕組みや速さには大きな違いがあるといえるでしょう。
生分解性プラスチックが使用されている主な製品
・食品容器、カトラリー、ストロー、ペットボトル
・ごみ収集袋、スーパーのビニール袋
・農業用のマルチフィルム
・山林などのマークテープ(樹木に巻き付ける目印となるテープ) など
食器容器のように、私たちが普段から使用している身近なものはもちろん、回収の難しい農林業などの製品に生分解性プラスチックが活用されることで、より安全に地球に還すことができるため、プラスチックが必要な場所で安心して使うことができるのです。
生分解性プラスチックの抱える課題とは
ここまでで、生分解性プラスチックは地球に優しく、“新しい”プラスチックとして従来のプラスチックから代替されるべき、と考える人も多いのではないでしょうか。
しかしながら、生分解性プラスチックにはまだ課題も多くあることや、用途によっては生分解性プラスチックが適さない場合もあることを知っておかなければなりません。
生分解性プラスチックが使用されるべきシーンは「非耐久財」の場合です。
種類によって耐久性には違いがありますが、生分解性プラスチックの特徴である自然環境で分解されることから、非耐久財であることが望ましいとされています。
このため、しばしば「使い捨て」のプラスチックとして考えられてしまうことが懸念点であるといえるでしょう。
また、現在ではまだ製造コストがかかることが課題です。
通常のプラスチックと比較し、高価格となってしまうため、購入者側の環境意識にその選択をゆだねることとなってしまいます。
そしてもちろん、すぐに分解できるものではありません。
従来のプラスチックと比較し、生分解性プラスチックはその分解性が高いといえますが、分解の条件が分解スピードや分解力に影響を与えることは忘れてはなりません。
環境のことを考えた素材選びを
プラスチックは私たちの暮らしに身近で、しかも欠かせないシーンの多いものです。
近年では代替品の登場によって、プラスチック以外の選択肢もでてきていますが、まだプラスチックが必要であることも多いでしょう。
生分解性プラスチックはそんなときの選択肢の1つであり、当然ながら、生分解性プラスチック以外への代替可能性についても配慮しなければなりません。
材料それぞれの特性を理解した、より地球の未来のためになる選択をしていくことが、地球環境に良い結果をもたらすといえるでしょう。