目次
地球温暖化が与える、海への影響
地球温暖化…私たちが耳にする環境問題の中でも、とりわけ聞くことの多い、大きな問題。
毎年夏になると「去年までこんなに暑かったかな?」と思わず口にしてしまいますよね。
地球温暖化が海に与える影響としてよく知られているのが、氷河や氷床が溶けることによる、海綿状上昇。
これにより、沿岸地域や島嶼部は浸水や海面上昇による被害を受けています。
また、海水温が上昇することにより、サンゴ礁など生態系に悪影響を及ぼし、多くの生物が生息できなくなっています。さらに、温暖化による海水の酸性化も問題となっており、カルシウムを含む生物の殻や骨が溶けることで、生態系のバランスが崩れています。
このように温暖化が海に与える影響は決して看過できるものではなく、私たちが解決すべき喫緊の課題といえるでしょう。
今回テーマとしてお話する、「海の塩分濃度」についてもあまり知られてはいませんが、地球温暖化の影響が少なからずあるとされています。
海の塩分濃度は、地域や季節などによって違う
あまり知られていないことかもしれませんが、実は、海水の塩分濃度は地域によって異なります。海水の塩分濃度は海域の特性や気候条件、流入河川の影響などによって変化することが、その理由です。
一般的に、塩分濃度は部分的には海水の蒸発と降水のバランスによって影響を受けます。例えば、熱帯や乾燥した地域では、高い蒸発が起こるために塩分濃度が高くなりがちです。一方、寒冷な地域や多雨地帯では降水が多いため、塩分濃度が低くなる傾向があります。
また、海流や潮汐も塩分濃度に影響を与える要因となります。海流によって異なる塩分濃度の水が混ざることで、地域ごとに塩分濃度が変動します。特に海峡や狭い海域では、塩分濃度の変動が顕著に見られることがあります。
したがって、日本海やエーゲ海など、異なる海域では塩分濃度が異なることがよくあります。また、時間経過や季節によっても塩分濃度は変動することがあります。
塩分濃度は温暖化で濃くなっている?
海水中の塩分濃度が過去と比べて高くなっているかどうかは、地域や時間帯によって異なるため、一概に言い切ることは難しいです。ですが、一般的な傾向として、過去数十年間で海水の塩分濃度が上昇していることが分かっています。
以下は、国際連合の科学的な組織である国際連合環境計画(UNEP)の報告書で示された数値です(出典: “In-depth Assessment of the World’s Freshwater Resources”、2002年)。
平均的な海水の塩分濃度:
- 現在: 約3.5%
- 過去100年間: 0.1〜0.3%の増加
この報告書によれば、過去100年間の間に海水の塩分濃度が若干増加していることが示されています。ただし、これは一般的な傾向であり、地域によって変動があることも分かっています。
塩分濃度の上昇には、さまざまな要因があるとされていますが、その中の1つに地球温暖化による気候変動や氷河の融解などが影響を与えているとされています。
海水塩分濃度が上がることで、どんな影響がある?
海水中の塩分濃度が濃くなることで、海の生物にはどんな影響があるのでしょうか。
その影響は決して少なくなく、海洋生態系全体に影響を及ぼすことも想定されています。
海水中の塩分濃度が高まることで生じる主な影響をいくつか挙げてみます。
海洋生物の生理的ストレス
塩分濃度の変化は海洋生物に大きなストレスを与えることがあります。高塩分の環境では、海洋生物が体内の水分を維持するためにより多くのエネルギーを消費する必要があるため、生物の成長や生活活動に影響を与えうることが分かっています。
生態系の変化
塩分濃度の増加は、特定の海洋生物の優勢度を変化させる可能性があります。一部の種は高塩分の環境に適応して繁栄する一方で、他の種は影響を受けて生息域や個体数が減少することがあります。このような変化は生態系のバランスに影響を及ぼす可能性があります。
水温との相互作用
塩分濃度は海水の密度に影響を与えます。塩分濃度が高くなると、水の密度が上昇し、沈降する冷たい水の量が増えることがあります。これは海流や海洋循環に影響を与え、水温の分布を変えることがあります。海洋生物にとっては、水温の変化も重要な要因となるため、塩分濃度と水温との相互作用は生態系に影響を与えることがあります。
営養塩の濃度
塩分濃度は海水の密度に影響を与えます。塩分濃度が高くなると、水の密度が上昇し、沈降する冷たい水の量が増えることがあります。これは海流や海洋循環に影響を与え、水温の分布を変えることがあります。海洋生物にとっては、水温の変化も重要な要因となるため、塩分濃度と水温との相互作用は生態系に影響を与えることがあります。
これらの影響は地域や環境条件によって異なりますが、海水中の塩分濃度の変化が海洋生態系に与える影響は重要であり、継続的なモニタリングと保全対策が必要とされています。
海の環境が変わることで、私たち人間にも影響が…
海の塩分濃度が変化することで、当然ながら私たち人間にも影響があります。
水温の変化やプランクトンの増加などは、漁業に大きな影響を及ぼします。漁獲量の変化だけではなく、海洋環境の悪化が生態系に及ぼす影響によって、これまで食べることのできていたものが食べられなくなることもあるのです。
例えば、赤潮藻が増殖すると、海水中に毒素を放出することがあります。これにより、魚や貝などの水産生物が毒素を蓄積し、食品連鎖を通じて人間にも影響を及ぼすことがあります。特に貝類は毒素を蓄積しやすく、食中毒の原因となることがあるのです。
他人事ではない!海の環境問題に目を向けよう
環境問題は、それぞれが独立した問題ではなく、連鎖し、影響を与え合うものです。
短期的には自分に関係ないことかもしれませんが、私たち人間の行動の積み重ねが地球環境に与える影響は非常に大きく、結果的に自分たちに大きなしっぺ返しを受けてしまうこととなるのです。
地球温暖化は、人間の活動(二酸化炭素の排出など)が大きな原因であることは言うまでもありません。私たち一人ひとりができること……例えば、ごみの排出量を減らす、プラスチックやレジ袋などを使用しないなど小さなことの積み重ねから、まずは取り組んでみてはいかがでしょうか。