この頃よく耳にする「食品ロス」という言葉。食品ロスとは、本来であれば食べられるのに、捨てられてしまう食品を指します。
2015年のSDGs採択以降、「つくる責任 つかう責任」として、各国が食品ロスの削減に向けた取り組みを強化しています。
この記事では、食品ロスの現状と問題点、そして食品ロスの削減に向けて私たちができることについて取り上げます。
目次
食品ロスの現状
テレビやインターネットなどで、開封されていないお弁当やパンが、大量に廃棄されている映像を見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
みなさんの身近な例でも、食材の買いすぎやご飯を残してしまうといった経験があるかもしれません。
1.日本の食品ロス量とは
農林水産省によると、2019年の日本の食品ロス量はおよそ570万トンと推計されています。イメージでは、企業による食品ロスがその大部分を占めそうではありますが、実はそうではありません。
食品ロスは、「家庭系食品ロス」と「事業系食品ロス」の2つに分けられており、事業系食品ロスはさらにそこから4つに分類されます。
データを見ると、食品ロスの半数近くは私たちの家庭で発生しており、意外にも食品ロスの問題が、私たちのすぐ身近なところにあることが分かります。
2.さらに深刻な世界の食品ロス
FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書によると、世界では毎年およそ13億トンの食料が廃棄されており、これは1年間の世界の食料生産量の3分の1に相当するとしています。
このように大量に廃棄された食品は、最終的にごみとして処理工場に運ばれますが、水分を含む食品については、運搬や焼却に際に二酸化炭素を排出するため環境負荷につながります。
2019年の世界人口は約77億人ですが、今後も世界の人口は増加し続けると予測されており、2050年には約97億人にまで増加すると予測されています。
現在の状態が続けば、人口が増加するにつれて食料不足が問題となる可能性があり、各国ではそのような事態とならないため、あらたな制度の導入や食品廃棄物をビジネスへ転換するといった取り組みが広がっています。
食品ロスが生じる原因と対策
ではなぜ、これほどまでに大量の食品ロスが発生するのでしょうか。
ここでは、家庭と事業所ごとに食品ロスが発生する原因について解説していきます。
1.家庭での食品ロスの原因
家庭から発生する食品ロスには主に、①料理の作りすぎや好き嫌いによる「食べ残し」、②野菜の皮や茎などの食べられる部分まで捨ててしまう「過剰除去」、③長期保管による消費期限切れや食べ忘れなどによって捨てられる「直接廃棄」があります。
このような家庭での食品ロスを防ぐためには、買い物をする際には事前に自宅にある食材を確認し、調理に必要な量だけを購入するという意識をもつ必要があります。
また、商品棚の手前には賞味期限が近付いている商品が置かれていることが多いので、すぐに調理する予定の食材は、可能な限り手前から取り賞味期限切れによる廃棄を防ぎましょう。
2.事業者による食品ロスの原因
各事業所における主な食品ロスの原因は、以下の通りです。
内訳 | 原因 |
食品製造業 | 製造工程でのロス |
過剰生産 | |
外食産業 | 食べ残し |
仕込みロス | |
食品小売・卸売業 | 3分の1ルールなどの商習慣 |
破損や規格外野菜などのロス |
食品小売・卸売業での「3分の1ルール」とは、企業における商習慣です。
お菓子や飲み物、缶詰といった食品には賞味期限が記載されていますが、卸業者はこの賞味期限が3分の1となる前に小売店に納品しなければならないとするルールがあります。
賞味期限が残り3分の1となった場合、一部は値引き販売などがされますが、最終的には店頭からの撤去もしくは廃棄されてしまうため、長らく食品小売・卸売業界における問題となっていました。
しかし、2012年に農林水産省が「食品ロス削減のための商習慣検討ワーキングチーム」を発足させたことを機に、これらの食品ロスの削減に向けた取り組みを開始しました。
これらの取り組みより、「株式会社イトーヨーカ堂」や「株式会社セブン‐イレブン・ジャパン」といった大手小売業者が3分の1ルールの緩和に応じるなど、一定の成果をあげることができています。
食品ロスを減らすためにわたしたちができること
果物や野菜、魚といった生鮮食品には、「外観品質基準」という厳しい基準が設定されており、この基準に達していない食品は多くの場合、廃棄されてしまいます。
近年では、そのような基準に達していない食品を販売する企業なども増加しており、従来の基準が見直されつつあります。
消費者が積極的に基準外の食品を購入することで、生産者や小売・卸売業者へのそのような取り組みの促進へと繋がるでしょう。
ちいさな取り組みはいずれ大きな力となりえるので、一人ひとりが食品ロスに対する高い意識を持つことが大切です。