世界でも権威あるアメリカの学術雑誌「サイエンス」。2006年に同誌は、「2048年には海から食用の魚が絶滅する」とした論文を発表し、世界中に衝撃を与えました。
近年、世界では水産物の乱獲が問題となっており、現在のペースで水産物の乱獲が進むとサイエンス誌が発表したように、いずれ海から海洋生物がいなくなる日が来てしまうかもしれません。
そのような事態を回避し、持続可能な漁業の実現に向けて導入されたものが、「MSC認証(海のエコラベル)」です。
目次
MSC(海のエコラベル)の3原則
現在、世界の人口は年々増加しています。UNIC(国連広報センター)によると、2050年には世界の人口はおよそ97億人に達すると予測されており、今後さらに水産物の消費量は増加すると見込まれています。
MSCでは、これからも私たちが十分な水産物を食べられるように、以下の「持続可能な漁業のための3つの原則」を定めています。
1.資源の持続可能性 | ルールに基づいて漁業を行い、漁業対象の水産物の資源量が十分に確保 |
2.漁業が生態系に与える影響 | 漁業活動による水産生物の生息場所の劣化を防ぎ、対象外の水産生物(ウミガメや海鳥など)の混獲を最大限に抑える |
3.漁業の適切な管理システム | 原則1~2を達成するため、国際および国内の法律、ルールを遵守する |
2020年時点では、これらの原則を守りMSCプログラムに参加する漁業者の割合は全体の18.6%となっており、その数は徐々に増加しています。
発展途上国においても、同プログラムに参加している漁業の数がすでに84にも達しており、今後もその数が増加することが期待されています。
MSC(海のエコラベル)認証の水産物を購入するメリット
消費者がMSC認証の水産物を購入するメリットには、水産物や海洋環境の保全がありますが、その他のメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
1.科学的基準に基づいた支援ができる
MSC認証マークを取得するためには、MSCではない、独立した専門家チームである第三者機関が、「持続可能な漁業のための3つの原則」に即した漁業を実施しているか審査を行います。
この審査は一度で終了ではなく、毎年、年次監査が行われ、取得規格に適合しているかを審査されます。
このように継続的に、専門家による科学的な基準に基づいた審査が行われるので、その信頼性は非常に高いものだとされています。
2.消費者から変化を起こすことができる
私たちがMSCに認証された水産物を積極的に消費することで、漁業者や水産業者の売り上げに貢献することができます。
MSC認証製品の需要が高まることでそれらの市場は拡大し、より多くの企業がMSC認証製品を取り扱うようになります。
私たちが行動を起こし、MSC認証製品の市場を拡大させることで、多くの企業にMSC認証製品の取り扱いを促進させる効果が期待できます。
3.海洋環境を保護できる
海には非常に多くの生物が存在しており、それらの生物は私たちの食生活を支えています。
MSCプログラムで保護できる対象は漁獲の対象である生物だけではなく、海洋環境全体を守ることができ、サステナブルな漁業を実現することは、私たちの将来の食生活を守ることにも繋がります
MSC認証製品は今では世界100か国以上、数万品目が販売されており、スーパーなどでも手軽に購入することができますので、海洋環境全体、そして私たちの未来の食生活を守るためにも積極的な取り組みが求められます。
MSC(海のエコラベル)認証製品の普及に向けた企業の取り組み
ここ数年、MSC CoC認証取得事業者が急速に増加しており、その数は2021年には日本国内だけでも300社以上となりました。
MSC CoC認証とは、MSC認証された製品に非認証の製品が混入しないように、製品が辿ってきた経路を管理する仕組みを指し、すでにこのMSC CoC認証を取得している現場は世界で46,205(2021年時点)に達しています。
ここでは直接・間接問わず、積極的にMSC認証製品の普及に取り組んでいる企業をご紹介します。
1.イオンリテール株式会社
総合スーパーマーケット「イオン」を運営するイオンリテール株式会社では、2006年に初めてMSC認証の「たらこ・明太子・鮭」を販売しました。
同社は、水産物は石炭や石油といった枯渇資源と違い、サステナブルな管理して漁獲すれば、未来まで食べ続けることができるという理念のもと、MSC認証商品の普及に取り組んでいます。
2.パナソニック株式会社
パナソニック株式会社では、2018年より同社の社員食堂においてMSC認証を取得した水産物を使用した「サステナブル・シーフード」の提供を開始。
社員食堂にMSC認証を取得した水産物を使用することで、MSC認証の重要性を周知する狙いがあるとのことです。
今では同社の取り組みにならって同様の食堂を導入する企業も現れるなどしており、同社の取り組みは、MSC認証製品の普及において功を奏したといえるでしょう。
日々手に取るものから考えたい、海や海洋生物の未来
私たち消費者も積極的にMSC認証の水産物を購入することで、企業のこのような取り組みを支えることができます。
持続可能な漁業を実現するため、私たちみんなで力を合わせ協力していきましょう。