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プラスチックはどのくらいリサイクルされている?
ペットボトルやストロー、容器など、さまざまな用途で使用され、今や生活に欠かせない存在となったプラスチックですが、その処理方法については多くの問題を抱えています。
人類がこれまでに作ってきたプラスチックの量は、1950年から2016年にかけて83億トンにのぼり、重さにすると東京スカイツリーの20万個分に達します。
実はこうしたプラスチックごみのうち、「91%がリサイクルされていない」という真実をご存知でしょうか?
リサイクルされない91%のうち、焼却されたものは12%で、残りの79%は埋め立て処分されたり、自然環境に流れ出してしまったりしている、とされています。
プラスチックのリサイクル率が低い理由
いくら家庭のゴミ捨てで分別していても、きちんとリサイクルされるプラスチックはごくわずかなのです。
ではなぜプラスチックごみのリサイクル率は低いのでしょうか?
理由① リサイクルコストが高いから
プラスチックのリサイクルは、通常プラスチックを細かく裁断して溶かし、また別のプラスチックを生み出すことで行われます。
しかし、リサイクルの過程でさまざまな不純物が混じってしまうため、リサイクルによって透明なボトルを再び作り出すことは非常に困難です。
もちろん技術的には可能であるものの、手作業で不純物を取り除いていくとなるとコストがかかりすぎてしまうため現実的ではなく、結果的にリサイクルするたびに質が落ちてしまいます。
ところが透明で中身がクリアに見えるボトルでないと消費者は買ってくれないため、リサイクルが進まず、新しいプラスチックが次々と製造されてしまうのです。
理由② 同じ素材だけを集める必要があるから
一言でプラスチックといっても、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレンなど、たくさんの種類があります。
実はポリエチレンからはポリエチレン、ポリプロピレンからはポリプロピレンと、リサイクルするには同じ材質だけを集める必要があります。
そのため、「プラスチックごみ」として分別して捨てられたとしても、複数の材質が混座っている状態となっているため、実際にリサイクルするには材質別に選別する必要があるのです。
毎年膨大なプラスチックごみが捨てられている背景から、こうした選別を人の手作業で行うことは非常に困難で現実的ではありません。
理由③ 複合樹脂で作られるケースが増えているから
近年のプラスチックは、強度や寿命を延ばすために複合樹脂で作られるケースが増えています。
複合樹脂とは、たとえばポリエチレンとポリプロピレンなどを一定の割合で配合させているプラスチックであり、日本ではプラスチック製品を単一樹脂ではなく、複合樹脂で作るケースが多くなっています。
ところが、リサイクルにおいては同じ素材を合わせる必要があるため、複合樹脂で作られたプラスチックを回収したとしてもリサイクルが困難となってしまいます。
理由④ 汚れの洗浄が難しいから
プラスチック製品の多くは容器として使用されることが多いため、食品の油などが付着して汚れているケースが多く、リサイクルするにはまず洗浄から始める必要が出てきます。
ところがプラスチックは炭化水素骨格で作られているため、材質上、油が付きやすく落ちづらい性質を持っています。
そのため、たとえばコンビニで大量に売られているプラスチック製の弁当容器の油汚れをリサイクルのために、すべてキレイに洗浄することは現実的ではなく、結局焼却や埋め立て処理に回されてしまうことが現実です。
▽理由⑤ さまざまな化学物質が添加されているから
プラスチック製品は、着色や耐久性、柔軟性を持たせるために、さまざまな化学物質が添加されています。
しかし、添加される化学物質は有害なものも多く、リサイクルしたものが汚染されてしまう危険性が伴います。
また、着色されたものについては、その化学物質だけを取り除くことが困難であるため、使用用途も極端に限られてしまいます。
リサイクル率のからくり?!日本の公表内容を読み解く
環境省によると、日本では2013年に940万トンのプラスチックごみが排出されましたが、その処理方法の内訳は以下です。
・焼却処理:67%
・リサイクル:25%
・埋め立て:8%
そして焼却処理の67%のうち、10%は単純に燃やされ、57%は発生した熱を再利用(熱回収)しています。
ところが日本では、この熱回収をサーマルリサイクルと呼び、リサイクルとして位置づけているのです。
そのため、プラスチックのリサイクル率25%だけでなく、熱回収の57%も合わせて、82%というリサイクル率を公表しています。
もちろんこの熱回収は、国際的にはリサイクルとして認められていません。
さらに25%のリサイクル率も、その7割が東南アジアや中国に輸出して、リサイクルを依頼していました。
そのため、日本国内で実際にリサイクルしている割合は1割にも満たない結果となっています。
こうしたリサイクル率の低さの影響により、以下のような環境悪化に繋がっています。
・プラスチックを焼却処理することで発生する温室効果ガスによる地球温暖化問題
・海外に輸出した先でプラスチックごみが放置されることで自然界に流出し、餌と間違えた食べた海の生き物を死滅させる問題
近年では東南アジアや中国のゴミ処理のキャパシティーが追い付かず、プラスチックごみの輸出を拒否される事態も発生しており、プラスチックごみのリサイクル方法を抜本的に変える必要性に迫られつつあります。