「フラワーロス(ロスフラワー)」という言葉を知っていますか?
観賞用の植物を栽培する農業・花卉(はなき)産業で、近年注目されている問題で、観賞用として規格を満たしていないものや売れ残った植物が廃棄されていることをいいます。
特に昨今では、「ごみを減らそう」とさまざまな産業でも取り組みがされていますが、今回取り上げるフラワーロスについてはどのような現状があり、今後どのような取り組みがされていくのでしょうか。
目次
フラワーロスとは
フラワーロス(Flower Loss)とは、花卉産業において生じる花や植物の廃棄物や損失のことを指します。花束、アレンジメント、観賞用の植物などを生産、流通、販売する過程で、多くの花や植物が廃棄されているのです。
本来、花は一時的な美しさを提供するだけでなく、豊かな生態系にも貢献するものですが、こうした人間の活動・生産によってフラワーロスが増加することで、環境への負荷が増えているのが現状。 昨今の環境課題の1つとして注目され、改善すべきと考えられている問題の1つです。
どんな花や植物が廃棄されている?
普段、私たちが花屋などで目にする花・植物はどれも美しいものばかり。
商品として販売されるものは、一定の規格を満たす必要があり、この基準を通過したものだけが市場で販売されています。
出荷の際に、等級と品質を分けるのが通常で、例えば、サイズはSS~4L、品質は秀・優・良のような分け方をしています。
そして、供給過多になってしまった場合も廃棄の対象となります。
記憶に新しいところで言うと、コロナ禍で結婚式などのイベントが中止となった際は、供給先を失い、多くの花が廃棄となったこともあるようです。
商品として提供する際に、同じあるいは一定以上のクオリティのものを供給することは、花に限らず必要な考えの1つかもしれません。あるいは私たち消費者がそういったものを求めてきた結果かもしれません。
しかし、花や植物は同じ環境下で育ててもすべて同じ状態になるとは限りません。 産業として普及していくなかで、本来自然の状態であればその美しさを楽しめたはずの花や植物が多く廃棄されている、というのが残念ながら現実なのです。
フラワーロスによる環境問題とは
私たち人間が産業活動の1つとして育成してきた花や植物を廃棄することには、環境面からみてどのような問題があるのでしょうか。
資源浪費
花卉産業では、多くの場合、美しさを保つために花を長時間保存するための資源(水、エネルギー、化学物質)が使われます。フラワーロスが問題となっているということは、「廃棄する花のために」資源が無駄に消費されているということ。環境への負担が本来必要なもの以上になっています。
廃棄物問題
花卉業界では、枯れた花や不良品の花、余剰在庫が大量に廃棄されます。これらの廃棄物は埋立地に送られ、生分解に時間がかかるため、地球環境に負担をかけています。
輸送とエネルギー消費
花は国内外で取引されており、なかには長距離の輸送を要すケースもあります。これにより、大量の燃料が消費され、二酸化炭素の排出が増加しています。
フラワーロスは経済損失にもなっている
残念なことに、日本でも多くの花や植物が廃棄されています。
データによると国内で廃棄されている花は、生産量の30~40%にまでのぼるといわれており、その経済損失は年間1,500億円ほどともいわれています。
これだけ多くの花が廃棄されているのですが、フラワーロス問題が社会的に大きく注目されるようになったのは、コロナ禍以降だともいわれています。
最近では、企業もこの問題に注目しており、フラワーロスを減らすべく、新たなサービスも生まれてきています。
企業の取り組み事例
花や植物を取り扱う企業も、こうしたフラワーロス問題に対して取り組みを始めています。
持続可能な生産
持続可能な農法を採用し、農薬や化学肥料の使用を減らすことで環境に配慮する取り組みを行っている花卉産業業者も増えてきています。また、水の効率的な利用や再生可能エネルギーの導入をするなど、見直しもされてきているようです。
廃棄物削減
私たち消費者と直接つながっているフラワーショップなどでは、不良品の再利用やリサイクル、余剰在庫の最小化に取り組んでいます。また、花束やアレンジメントのデザインを工夫し、花の寿命を延ばす努力もなされています。
値下げやドライフラワーにアレンジして販売するフラワーショップもあります。
地域資源の活用
一部の地域では、現地で栽培された花を優先的に販売し、輸送に伴うエネルギー消費を削減しています。地域社会への貢献も意識されています。
綺麗な花が届くまでの過程を知って、フラワーロスを防ごう
フラワーロスは、花卉産業における環境問題の一つであり、資源浪費や廃棄物の増加、エネルギー消費の増加などが含まれます。しかし、近年ではこうした課題への取り組みも増えてきました。私たち消費者としても、環境に配慮した花の購入や、廃棄物削減に寄与できる行動を考えることが重要です。
花や植物は、私たちの癒やしになったり、暮らしを彩ったりしてくれる、美しく大切な存在。
花本来の美しさや不揃いさも楽しめるような気持が、フラワーロスを減らすきっかけになるのかもしれませんね。