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日本では感じられない世界の水不足の現状
私たちが住む日本では、飲み水や衛生管理に必要な水は充実していますが、日常では感じられない水不足の問題で、世界では何十億もの人々が悩みを抱えています。
安心して飲める水を口にできない人は世界に約20億人いると言われており、不衛生な水を飲み、急性の下痢を引き起こし、多くの死者を出した過去や、安全に管理されたトイレの利用ができない状況の人々も多くいます。
コンビニや自動販売機で簡単に飲料水を購入でき、自宅の蛇口を捻ればすぐに手洗いできる私たちの生活では想像がつかない問題が山積みではありますが、対策にあたってどのような原因があるのかを探ります。
原因① 気候変動
世界の降水量が多い地域では、大雨による水害の影響で水不足に悩み、干ばつによって砂漠化し水不足に苦しむ地域もあります。
地球温暖化の影響により降水量だけでなく、雨の強さや頻度も変動があり、この異常気象により飲み水だけに留まらず、産業や農業にも大きな影響を与えてしまっています。
気候変動の原因は、私たちの生活の上で必要不可欠な電気やガスが影響しています。電気やガスを作る上で必要な、化石燃料の使用による二酸化炭素の大量排出が原因で、温室効果ガスの濃度が増加し、気候に影響を与えているのだそうです。
参照:環境省「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)サイクル」(2021.8.9)
こういった気象変動による災害は世界各地で多発しており、2015年には国家レベルの洪水が152件、洪水被害の影響を受けた人口は約3千万人、干ばつは32件発生し、干ばつ被害を受けた人口が約5千万人に上ると報告されています。
そして、いま私たちが暮らす日本でも、地球温暖化の影響で、世界と比べても早いペースで年平均気温が上昇しています。気候変動による水被害などは、他人事では済ませられない問題となっています。
原因② 人口の増加
水不足は、人口の増加により水の使用量が増えたことも大きな要因です。
また、人間の生活を豊かにするための産業の発展により、過剰に水を利用することで、限りある水資源不足が深刻化しています。
人間が排出した水が海や川、地下水の汚染にも繋がり、更なる環境問題を引き起こしています。
特に水問題が深刻化している国は、主にアメリカ・中国・インド・中央アジア・中東などの中緯度地域が該当し、各国、水資源の量と使用量のバランスが崩れていることが共通しています。
2050年には世界の総人口数は約97億人増えると予想されている中、さらなる水不足の問題を引き起こす可能性を考え、大幅な使用量の削減や水質汚濁の対策をする必要があると言えます。
このように、急速に進む私たち人間の暮らしの変化が、地球環境に与える影響は決して小さなものではありません。
この深刻な事態に対し、個人はもちろん、最近では多くの企業が課題意識をもちさまざまな取り組みを始めています。
水不足解消のために…企業の取り組み事例
水不足の問題を少しでも解決するべく、現在では世界中の多くの企業が積極的に取り組みを行っています。私たちができる問題解決に役立つアイテムの開発をしている企業から、実際に水不足に苦しむ国へ、直接的に解決策を実施している企業を一部ご紹介します。
企業の取り組み事例① IKEA
家具メーカーで有名なIKEAの株会社であるインター・イケア(Inter IKEA)では、環境テックスタートアップの企業と共に、再生水シャワーの共同開発を行っており、現在発売に向けて試験段階にあります。
環境テックスタートアップの企業は、独自の技術で再生水シャワーを開発し、従来のシャワーと比較して、水の消費量を最大80%削減、エネルギー消費量を70%削減することを実現しています。
インター・イケアと共同開発する事により、手頃な価格で利用できる家庭用節水シャワーを手に入れ、多くの人々が水不足の問題に協力できることを目指しています。
企業の取り組み事例② 伊藤園グループ
日本茶が代表商品の伊藤園グループにとって、水資源は重要なものであることは言うまでもありません。
環境に関する課題の実態を把握するとともに目標と対策を審議するCSR/ESG推進委員会を設置して、水資源を保持し、効率的に水を使用することや水質汚濁の防止に積極的に取り組んできました。
同グループでは社内での水使用量の削減に努めるほか、製造委託先の水使用量や排水状況も把握し削減対策を実施しています。温水だけで容器内を殺菌する、薬剤を使わない仕組みを導入し、薬剤を洗い流すための余分な水の使用を削減することで、節水を実現しています。
企業の取り組み事例③ 株式会社ダスキン
清掃業で多く使われる水源ですが、株式会社ダスキンでは水不足は事業継続に影響を及ぼしかねません。
生産事業所から排出される水について、水質汚濁法や下水道法における規制値の80%以下とし、その仕組みを構築しています。
また、モップやマットの洗浄工程で多量の水を使うため、取水量においても徹底した管理・削減を行い、排出する水への影響を考え、洗剤を溶けやすくするため洗浄水を軟水化処理するなど洗剤使用量の削減にも努めています。
企業の取り組み事例④ テラオライテック株式会社
設備工事や電気工事をはじめとし、住宅リフォームなど様々な事業を展開するテラオライテック株式会社では、アジア各国の水不足の問題を解決するべく、食用淡水魚の養殖事業を行い、養殖事業の収益を原資にプレアビフィアの上下水インフラ整備を行う目標を立てています。
カンボジア王国プレアビヒア州は乾季においては、飲み水の確保が非常に困難なため、離れた町に水を汲みに行くことが主に子どもたちの仕事です。
それゆえに、学校に通うことができない子どもたちが多くいる為、識字率も低く、仕事に就くこともできない人が多く存在するようです。
テラオライテック株式会社では、養殖事業を行うことにより、一方的な水の支援をするだけではなく、子どもたちの教育を可能にする収益事業を実施、2方面での解決を目標に取り組みを進めています。
水不足問題を解決するために…私たち一人ひとりができること
SDGsの目標のひとつにも、「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」という内容が掲げられています。
多くの企業や世界的にも、問題解決に向けて取り組みが進められているのにも関わらず、誰もが安心して飲み水を確保できるようになるには、少なくとも100年はかかると予測されています。
日本にいる私たちにとって、こういった問題は身近に感じづらい環境なのかもしれません。
ですが、自然にある資源が循環して、私たちは生かされています。そのことを忘れず、私たち一人ひとりが世界への問題や将来に目を向け、節水や環境問題に対する対策意識を高めることが、解決へ向けた第一歩となるでしょう。