実は、札幌市や青森市などは、世界の都市の中でも年間降雪量の多い場所として知られています。
雪は、スキーなどの観光資源ともなる一方で、そこに生活する人々にとっては除雪などの対策を行わなければならないなど、課題も多くあります。
こうした自然と共存しつつ、自分たちの暮らしや地球の未来を守るための対策として、近年注目されているのが、「積雪発電」。
この記事では、雪国ならではの資源を生かした発電についてご紹介します。
札幌は世界でも有数の「降雪量の多い都市」
国内では、主に北海道や東北、北陸が降雪量の多いエリアとして知られていますが、いわゆる“雪国”であるにも関わらずたくさんの人々が暮らしている都市が、札幌。
世界の人口と降雪量をグラフにしたデータを見てみましょう。
海外の同規模の人口が暮らすエリアと比較すると、札幌市ほど降雪量の多い都市はありません。
札幌市は、降雪量が年間6メートルに達するにも関わらず、人口196万人の人が暮らしている都市であることが分かります。
グラフには、国内で積雪量が多く人口の多いエリアがいくつかありますが、その積雪量の多さに驚かされます。
札幌市をはじめとしたこれらの都市は、まさに雪と共存している場所。
人々が冬の間も快適に生活ができるよう除雪などが行われていることも、その理由の1つと言えるでしょう。
しかし、雪を有効活用できていないのも課題で、これまでほとんどの雪が雪処理施設などで処理されていましたし、 また、積雪量の多いエリアの特徴として、雪害などで電気が使えなくなった場合に備えて、灯油など保管が可能な燃料が必要で、さらには多くのエリアで自家用車の使用が多いこともあり、脱炭素へのハードルが高いことも大きな課題です。
雪をエネルギー資源として活用「積雪発電」とは
脱炭素のための新しい発電方法として、現在取り組みが進められているのが「積雪発電」。
これまで処分してきた雪を資源として活用できるとして、いま非常に注目されている発電方法の1つです。
積雪発電は、まだ実証実験段階(2024年1月時点)のようですが、すでに国内で研究が進められており、青森市、電気通信大学、株式会社フォルテ(本社:青森市)などが携わっています。
その仕組みは、発電に必要な「温度差」を利用したもの。
雪で冷やされた不凍液が発電機に送られ、一方でボイラーの燃焼によって生じた熱も送られています。この2つの温度差でピストンが駆動し発電します。
また、発電の際に生じた熱エネルギーを雪へ廃棄するため、その雪を融かすこともできる仕組みとなっています。
現時点で明らかになっていることは、低温熱源が雪で冷却されている場合と、20 ℃程度の水を用いている場合とでは、発電能力に差が出ることであり、雪で冷却した場合には発電能力が約100 Wほど向上することが確認されています。
国立大学法人電気通信大学 榎木研究室HP より
これまで莫大なコストをかけて処分するしかなかった雪を資源として有効活用できる、新たな技術が誕生したのです。
積雪発電にはまだ課題もあり、積雪量に左右されず安定した電力供給のための方法を模索するなど、いままさに研究が進められている、未来の発電なのです。
自然との共存共栄のためにできること
今回ご紹介した積雪発電のように、自然を資源として生かしつつ、未来のことを考えることは私たち人間の大きな責務でもあります。
太陽光発電や風力発電などもその1つですが、この積雪発電のように研究によって新しい可能性が広がることも期待できそうです。
国や企業の取り組みとして、こうした新しい可能性を模索するための研究は日々行われています。
私たち個人ができることは、電力の無駄遣いをしないなど二酸化炭素の排出を抑制するための取り組みや、省エネ商品を選択していくことなどがあげられます。
1つ1つの小さな行動が大きな結果につながることを忘れず、地球の未来のために日々の暮らしを振り返ってみませんか。