緑化が進む足尾銅山の取り組みは、コンゴ民主共和国の未来を変えるか

近年、世界各国で環境破壊や地球温暖化が問題視されている中、コンゴ民主共和国も環境破壊の大きな問題を抱えています。

森林減少が大きな課題となった、コンゴ民主共和国

コンゴ民主共和国では、雨に頼った農業がメインで行われており、十分な農産物の収穫ができていません。

事業地近郊には、鉱山が多くあり、一部の鉱山会社では、子どもを不当に働かせる行為もあり、就労の機会を奪うとして問題視されています。

そのようなコンゴ民主共和国では、いま環境破壊が問題視されています。

「地球の片肺」が抱える、環境破壊問題

コンゴ民主共和国は、アマゾンに次いで世界で2番目に多くの熱帯林があります。

その面積は、アフリカ全体の熱帯林のうち90%を占めており、地球の片肺とも呼ばれ重要な役割を果たしています。

しかし近年、多くの熱帯林を抱えるコンゴ民主共和国では、環境破壊問題が問題視されているのです。

現在、農地開墾や薪炭材を確保するために伐採が行われ、毎年多くの森林が失われています。

2002年からの20年間では、約630万haが失われており、特に2014年以降は年間で約45万haを超える熱帯林が減少し続けています。

コンゴ民主共和国では、農地開拓やバルトドールなどの輸出産業の急激な増加により、環境破壊も急速に進んでしまっているのです。

先進国からの需要が高まるほど、環境を破壊しかねない

国際エネルギー機関(IEA)が2024年5月に発表したクリティカルミネラル(重要鉱物)に関する報告書「GlobalCriticalMineralsOutlook2024」によると、6年後の2030年にはコバルト産出のシェアがコンゴ民主共和国で66%、インドネシアで10%、ロシアで3%になるとみこんでいます。

コバルト需要は2021年に約18万トン、2023年には約22万トンでしたが、2030年には約34万トンにまで拡大すると予想されています。

コバルト市場は年々大きくなっており、今後も需要が増えていくと考えられるでしょう。

しかし一方で、二酸化炭素の排出による環境問題が深刻化しているのです。

コンゴ民主共和国が視察した先は、足尾銅山

コンゴ民主共和国は、自国の環境破壊を止める対策法を打ち出すために、かつて環境状態が悪化していた足尾銅山を視察しています。

足尾銅山とは

足尾銅山とは、400年の長い歴史を誇る日本一の鉱都と呼ばれていた銅山です。

一般的に、足尾銅山は1610年に発見されたと伝えられていますが、実際には以前からあったのではとも推察されています。

発見当時、幕府が直々に管理して開発を進めていましたが、採れる銅の量が少なく採算があわないとして、1626年からは日光東照宮の支配下に置かれるようになりました。

その後、1647年に再び幕府が管理するようになり、銅の生産も活発化していき、最盛時には、毎年1500トン前後の銅が産出されたそうです。

実はいま、足尾銅山は緑化が進んでいる

かつて足尾銅山周辺の国有林は、森林伐採や山火事だけではなく、精錬所から排出される亜硫酸ガスによる煙害が原因で森林が消失し、広大な荒廃地が発生していました。

豪雨時には洪水が発生し、下流地域では甚大な被害がもたらされました。

禿山の再生は困難を極めましたが、昭和30年代に植生盤を活用した緑化工法が確立され、荒廃した土地全面に実施されたのです。

草木が枯れ荒廃していた山肌も、現在では久蔵沢や安蘇沢を中心に緑が復活しつつあります。

自然の景色が戻ってくるとともに、山にはツキノワグマやニホンカモシカが住み着き、川にはイワナやヤマメなどの魚が泳ぐようにもなりました。

足尾の緑化プロジェクトは「地球の片肺」をよみがえらせるか

アフリカ中部コンゴ民主共和国の政府高官は、自国の環境破壊を止め自然を取り戻すために足尾銅山跡や植樹活動の現場を視察しました。

足尾銅山跡の視察後、NPO法人である足尾に緑を育てる会を訪問しています。

国際協力機構が実施する研修の一環として、足尾銅山開発の歴史と環境破壊、その後の自然の再生への取り組みを学び、鉱山大国である自国の環境問題改善に取り組む姿勢を見せました。

環境・持続可能開発省のベンジャミン・トイランベ事務次官は「足尾銅山の取り組みを自国に生かしたい」と語っています。

地球はつながっている、先進国の豊かさは何かを犠牲にしていないだろうか

現在、コンゴ民主共和国では、農地開墾や薪炭材のために環境破壊が進行しています。

先進国の豊かさは、大きな犠牲の上に成り立っていることを、一人ひとりが認識し、地球という大きな環境を守っていくために、どのような行動をするべきか考えていきましょう。

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