鮭が高級品に…地球温暖化で変わる日本の食卓

秋の風物詩として日本人の食卓を彩ってきた鮭。

しかし今、このなじみ深い魚が「幻の魚」になりつつあります。

各地で遡上数が激減し、かつて5万匹近く獲れていた漁場で1匹も取れない日が続く異常事態が発生しています。

その背景にあるのが、地球温暖化による海洋環境の変化です。

暖流である黒潮の北上、動物プランクトンの減少、天敵の増加——複雑に絡み合う要因によって、鮭は生き残ることが困難になっています。

2年連続でゼロ-衝撃の遡上調査結果

長年にわたり続けられてきた鮭の遡上調査で、これまで想定されていなかった事態が現実のものとなりました。

象徴的な大河である利根川で「2年連続ゼロ」という結果は、地域的な異変にとどまらず、日本の鮭資源全体が直面する深刻な転換点を示しています。

利根川で起きている異変

埼玉県行田市と群馬県千代田町の間にある利根大堰を遡上する鮭の数が、2024年と2025年の2年連続でゼロという衝撃的な結果となりました。

水資源機構利根導水総合管理所が1983年から実施してきたこの調査では、2013年に最多の1万8696匹を記録しています。

しかし翌2014年以降は急激な減少に転じ、2024年に初めて遡上が確認できなくなり、2025年も同じくゼロという結果になりました。

茨城県神栖市と千葉県東庄町にまたがる利根川河口堰でも状況は同様です。

2015年には6425匹が確認されていましたが、2024年に0匹となり、2025年も12月22日時点でわずか2匹にとどまっています。

全国で進む漁獲量の激減

新潟県の三面川では古くから鮭漁が活発で、2017年には5万匹近い漁獲量がありました。

しかし近年は10分の1ほどまで減少し、日によっては1匹も取れないこともあるといいます。

日本全体で見ると、かつて25万トン近くあった漁獲量は5万トン程度にまで減少しているのです。

この減少は獲りすぎではなく、地球温暖化の影響が非常に大きいと考えられています。

地球温暖化が引き起こす海の異変

鮭の不振は河川環境だけでなく、海で起きている変化と密接に結びついています。

地球温暖化による海水温の上昇は、鮭の生理や回遊行動、さらには食物連鎖の構造そのものを変えつつあり、その影響は世代を超えて資源量の減少として現れています。

高水温が引き起こす直接的な影響

水温が高すぎると、鮭の代謝が高まりすぎて産卵場所に到達する前に力尽きてしまう可能性があります。

そのため、鮭は寒くなるまで河口付近で待機しますが、その間にサメなどに捕食されたり、時間切れで力尽きたりするケースが増えています。

実際に、2026年時点では北海道よりも本州で漁獲量が大きく減少しており、北海道内でも南部の減少が顕著です。

全体的に水温が上昇する中、北海道北部ではまだ鮭が生活できる水温が保たれているものの、今後さらに温暖化が進めば同様の状況になると予測されています。

天敵の増加という新たな脅威

温暖化によって、今までは鮭の生息海域に来られなかった捕食者が進出してきています。

最も深刻なのがサバによる稚魚の捕食です。

海に降りた小さな稚魚がサバの群れに遭遇すると、大量に食べられてしまいます。

海水温が高かった2019年に海へ下った稚魚が成魚となる4年後の2023年に、シロザケの漁獲量が減少しました。

また、2015年以降、岩手県では稚魚の放流時期にサバの漁獲が増えています。

これらの事実から、この説は有力だと考えられています。

また、ある程度成長した鮭は、別名「サーモンシャーク」と呼ばれるモウカザメ(ネズミザメ)などの大型捕食者にとって格好のターゲットです。

温暖化によってこうした大型捕食者も従来とは異なる場所で餌を食べるようになっていると考えられています。

黒潮北上が鮭を追い詰める仕組み

国立海洋研究開発機構、東京大学、国立水産研究・教育機構の研究グループが2025年9月に発表した論文によると、鮭が餌とする動物プランクトンが減少していることが明らかになりました。

動物プランクトンの成長に必要な栄養塩は、寒流である親潮では豊富な一方、暖流である黒潮には少ないという特徴があります。

利根川河口沖は親潮と黒潮がぶつかる海域ですが、黒潮が北上する傾向が続いているのです。

まとめ:秋の風物詩を守るために

日本の秋を象徴する魚である鮭が、地球温暖化によって「幻の魚」になりつつあります。

遡上数の激減、漁獲量の大幅な減少という現実は、もはや一時的な現象ではなく、構造的な問題であることが明らかになっています。

黒潮の北上によって栄養豊富な親潮の影響が弱まり、鮭の餌となる動物プランクトンが減少。

さらに海水温の上昇によって、従来はいなかった天敵のサバや大型捕食者が鮭の生息域に進出し、餌をめぐる競合も激化しています。

水温が高すぎることで、産卵のために川を遡上することすら困難になっている状況です。

私たち一人ひとりにできることは、まず無駄にせず、食べられる部分をすべて活用すること。

そして何より、温暖化を防ぐ対策を進めることです。

省エネルギー、再生可能エネルギーの利用、CO₂排出削減など、日常生活でできる取り組みを継続することが、鮭という秋の風物詩を次世代に残すための第一歩となるでしょう。

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