ゴーストギア(幽霊漁具)が生態系へ与える深刻な影響と対策

海の中で「誰にも管理されないまま」魚や海洋生物を捕らえ続ける漁具が存在します。

その名も「ゴーストギア(幽霊漁具)」。

ペットボトルや袋のようなプラスチックごみと比べると知名度は低いものの、海洋生物への被害という観点では最も深刻な廃棄物の一つです。

ゴーストギア(幽霊漁具)とは何か

ゴーストギアとは、何らかの事情によって海に放出・放棄され、持ち主を失った漁網・釣り糸・ロープ・仕掛けなどの漁具の総称です。

「幽霊漁具」とも呼ばれるこの名称は、所有者のいなくなった漁具が海の中を漂い続ける様子を幽霊になぞらえた表現です。

ゴーストギアを構成する素材のほとんどはプラスチックであり、海洋に流出するプラスチックごみ全体の少なくとも10%を占めると推計されています。

北太平洋の「太平洋ごみベルト」に漂うプラスチックを調査した研究では、そのうち約46%が漁具由来だったという結果も報告されているのです。

プラスチックは紫外線や波力によって少しずつ分解され、最終的には5mm以下のマイクロプラスチックとなって海全体に広がります。

ゴーストギアも同様にマイクロ化しながら生態系に広範な汚染をもたらします。

生態系・海洋生物への深刻な被害

海に流出・放置されたゴーストギア(廃棄漁具)は、単なる海洋ごみではなく、多くの生物の命と海の生態系全体に深刻な影響を及ぼす存在です。

絡まりや誤食といった直接的な被害に加え、長期にわたって環境中に残留することで、生態系のバランスそのものを崩す要因となっています。

海洋生物への直接的な脅威

研究によれば、ゴーストギアは海洋プラスチックごみの中で生物に対して最も致命的とされています。

現在確認されている全7種のウミガメ、海洋哺乳類の66%の種、海鳥の50%の種が被害を受けているのです。

網に絡まると身動きが取れず、溺死や窒息死につながるケースが多く、流出から数十年後に被害が起きた事例も記録されています。

海洋生態系そのものへのダメージ

海底に沈んだ漁具はサンゴ礁を破壊し、イソギンチャクや貝などの付着生物が暮らす環境を損ないます。

また、生物の移動を阻むことで繁殖や採食を妨げ、食物連鎖のバランスを乱すことも。

さらに海流に乗って移動するゴーストギアが外来生物の「乗り物」となり、在来種の生態系を脅かすリスクも指摘されています。

経済・社会への波及損失

ゴーストギアによる損失は環境面だけではありません。

混獲される野生生物の90%以上が経済的価値を持つと推定されており、持続可能な漁業資源が失われることを意味しているのです。

また、船舶スクリューへの絡まりによる航行事故、海岸景観の悪化による観光収入の減少なども経済的損失に含まれます。

漁業コミュニティ全体への打撃は地域経済にも深く影響します。

ゴーストギア対策の3本柱:防止・改善・軽減

GGGI・FAO・UNEPは、ゴーストギア対策を「防止」「改善」「軽減」の3軸で捉えることを推奨しています。

防止:流出をゼロに近づける

漁業者への教育・研修による適切な漁具管理の定着、政府による廃棄・リサイクルに関する規制整備、そして廃棄漁具の受け入れ体制の整備がカギとなります。

漁具マーキングの普及も流出後の追跡・回収を容易にします。

改善:流出しても被害が広がりにくい設計へ

自然環境中で分解される生分解性素材を漁具に取り入れることで、万が一の流出時にも長期間の混獲被害を防げます。

日本や韓国、ノルウェーなどでも生分解性漁具の研究開発が進んでいます。

軽減:既に流出したゴーストギアを取り除く

既存のゴーストギアを除去するには、積極的な回収活動しかありません。

漁業者・NGO・企業・地域住民が連携したビーチクリーンや潜水調査が世界各地で展開されており、回収された漁網を新素材へと再生するアップサイクルの動きと連動しています。

まとめ:海の未来のために、今日から知ることが第一歩

ゴーストギアは目に見えにくい存在でありながら、世界の海と生態系を静かに、しかし確実に傷つけています。

防止・改善・軽減の3本柱を組み合わせたアプローチ、そして国際機関から民間企業・市民まで幅広い連携が、問題解決のカギです。

消費者の立場からは、廃棄漁網を再生した製品を選ぶことで回収・アップサイクルの取り組みを後押しできます。

そして何より、問題を知り、周囲に伝えることが政策・規制強化への社会的な後押しにもつながります。

ゴーストギアという言葉を今日知った一歩が、海の未来を変える小さな力になれれば幸いです。

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