Fry to Fly!廃食油で空を飛ぶ飛行機と航空業界の取り組み

天ぷらや揚げ物をしたあとの油、どうしていますか?

濾して何度か再利用するという人も多いでしょうが、最終的に残った油は新聞紙に吸わせたり固めたりして捨てている…という人がほとんどではないでしょうか。

実は、今まで“捨てるしかなかった”廃食油を再利用する動きがあるのです。

環境に配慮した、新しいエネルギー活用について見ていきましょう。

廃食油とは

廃食油は、調理や揚げ物で使用された後に出る廃棄物の油のことで、例えば、家庭や飲食店、食品加工工場などで発生します。

廃食油は主に食材を調理することで変性してしまうため、再利用が難しいという課題がありましたが、最近ではリサイクル技術も発展し、専門業者によって回収され、活用されるシーンが増えてきています。

廃食油のリサイクルプロセスとしては、まず廃食油を収集し、不純物や水分を取り除くことから始まります。その後、精製され、バイオディーゼル燃料や動物用飼料などに再加工されています。

これまで処分が課題となっていた、廃食油ですが、その再利用が促進され、新たな製品の生産に活用されはじめました。

環境負荷を軽減し、持続可能なエネルギー活用の実現に向けて、今後もさらに注目が高まることでしょう。

廃食油で飛行機が飛ぶ?!

実は、廃食油の活用先の1つが、航空機燃料。

すでに日本航空(JAL)などでも廃食油をリサイクルした燃料・SAF(Sustainable Aviation Fuel / 持続可能な航空燃料)の活用を検討しています。

実は海外では10年以上前から、航空機に利用する燃料の一部にSAFを活用している航空会社もあります。その例が、ドイツのルフトハンザドイツ航空。

この航空会社では『Fry to Fly』…揚げ物で空を飛ぼう!というキャッチコピーを掲げ、SAFの活用を推進しています。

ドイツのルフトハンザドイツ航空『Fry to Fly』キービジュアル

廃食油が注目されるのには理由があります。

それは、従来の航空燃料と比較し、二酸化炭素の排出量を8割も減らせるという点。

廃食油は、もともと植物由来の油であるため、植物の成長過程の段階から、製造・運搬を経て、航空燃料として使用されるまでの過程をみると、従来よりも大幅な二酸化炭素排出量削減になっているのです。

廃食油・SAFの需要は高くなる一方で、価格も従来の油の3~4倍することもあるようですが、航空業界では気候変動対策としてSAFの利用が推進されています。 航空機には多くの燃料が必要で、その分、二酸化炭素の排出による環境への影響は大きな課題。日本の航空業界でも「2030年までに燃料の10%をSAFにする」という目標が掲げられています。

家庭用の廃食油も回収されはじめた

こうした廃食油の可能性は、日本国内でも注目され始めています。

最近では、廃食油を買い取る業者も増えてきており、これまで廃棄方法に悩んでいた飲食店などからも廃食油を買い取ってもらえるため、双方にとって大きなメリットとなっています。

また、家庭で出た廃食油も徐々に回収の動きが広がっています。

例えば、東京都。イトーヨーカ堂と連携し、店舗での回収を促進しています。これまでもペットボトルに入れた廃食油の回収をしていた経緯はありますが、再利用できる専用のボトルでの回収を行うことで、ゴミを発生させない仕組みを作ったことにも注目が集まっています。

ドイツでは“航空機を使用しない”という環境意識も

航空業界が廃食油・SAFの活用を模索する一方、ドイツ国内ではそもそも航空機を使用しないという考えも広まっています。

航空機による二酸化炭素の排出量は、電車移動の約6倍。

環境への負荷を考慮し、なるべく航空機を利用せず電車での移動をする人が増えてきているのです。

そんなドイツには『Flugscham(飛び恥)』という言葉もあるほど。

私たちが普段何気なく使っている油の新たな活用方法で環境負荷を抑制するとともに、そもそも「使わない」という選択肢も、個人でできる判断。

企業努力だけではなく、個人の選択が地球の未来を変える可能性について、考えていきたいですね。

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