増え続ける災害由来の「被害木」とその活用

台風、豪雨、地震、森林火災——近年、日本各地で大規模な自然災害が頻発しています。

こうした災害が引き起こすのは人命や建物への被害だけではありません。

山林から流れ出す倒木・流木、そして解体された家屋の木材など、大量の「被害木」が毎回発生し、その処理が深刻な課題となっています。

被害木とは? 災害が生み出す「木の廃棄物」

「被害木」とは、台風・豪雨・地震・土砂崩れなどの自然災害によって生じた木質系の廃棄物・損傷木の総称です。

具体的には次のようなものが含まれます。

・倒木・流木:山林で根ごと倒れた立木や、渓流・河川へ流出した木(幹・枝・根株)

・解体ごみ:被災した家屋の床材・壁材・柱など構造部材

・廃家財:タンスや机など流失・損壊した家具類

法律上、これらは原則として「一般廃棄物」に分類され、市区町村または委託を受けた事業者が処理責任を担います。

ただし、大規模災害時には処理量が自治体の能力を超えることも多く、都道府県や国が広域連携で対応にあたるケースも珍しくありません。

なぜ今、被害木が増えているのか

気候変動の影響を受け、日本では大型台風や「線状降水帯」による記録的な豪雨が常態化しつつあります。

実際、2016年以降だけでも北海道豪雨(2016年)・九州北部豪雨(2017年)・平成30年7月豪雨・台風21号(2018年)・令和元年東日本台風(2019年)・令和4年豪雨など、重大な災害が毎年のように発生しています。

たとえば令和4年8月、青森県外ヶ浜町の藤島沢では24時間で186mmという集中豪雨が発生。

渓岸斜面の崩壊と土砂・流木の流出で集落や国道に深刻な被害をもたらし、大量の流木処理が課題となりました。

被害木を放置するとどうなる? 見落とせないリスク

台風や豪雨、地震などの自然災害によって発生した被害木は、単に「片付けの問題」にとどまりません。

適切に処理・活用されずに放置された場合、火災の発生や生態系への悪影響、さらには将来的なコスト増大といった深刻なリスクを招く可能性があります。

自然発火・火災リスク

大量の被害木を仮置き場に積み上げたまま長期間放置すると、内部で発酵・発熱が進み自然発火につながる危険があります。

このため、仮置き場では木くずの山の高さを5m以下に保ち、山と山の間に2m以上の間隔を確保することが推奨されています。

生態系・森林再生への悪影響

山林に残された被害木はそのままにしておくと、害虫や病菌の繁殖場所となり、周辺の健全な林木に被害が拡がる恐れがあります。

また、倒木が渓流をせき止めると土砂災害のリスクが高まり、再度の流木被害を招く原因にもなります。

処理コストの増大

適切な分別・活用を行わずにすべてを廃棄物として処理すると、費用が膨らみます。

青森県の事例では、流木1tあたり18,000円の産業廃棄物処理費がかかっていました。

一方で再生活用を組み合わせることで、大幅なコスト縮減が実現しています。

被害木の活用法:廃棄物から資源へ

災害によって発生した被害木は、適切に分別・加工することで「処分すべき廃棄物」から「価値ある資源」へと転換できます。

マテリアル利用やエネルギー利用といった多様な活用方法を組み合わせることで、環境負荷の低減と処理コストの抑制を同時に実現することが可能です。

マテリアル利用:素材として再活用する

解体ごみの柱や幹など、土砂や異物の混入が少ない部材は、パーティクルボード(建材)・製紙用チップ・農業用マルチ材・畜産の敷料などに生まれ変わります。

利用先によって受け入れ可能な木材のサイズや品質が異なるため、仮置き場の段階から種類ごとに選別・管理することが品質確保の鍵です。

エネルギー利用:燃料として発電・熱に変える

チップ化した被害木は、木質バイオマス発電所の燃料や、工場・セメント工場のボイラー熱源として活用できます。

固定価格買取制度(FIT制度)を活用した発電所での利用も広がっており、燃料の由来(倒木か流木かなど)を都道府県や自治体が証明することで、一般木質バイオマスとしての売電が可能です。

平成28年熊本地震では、あるバイオマス発電所が2年間で約54,000tもの木質災害廃棄物を処理した実績があります。

土砂が混入すると灰の量が通常より約5割増しになるという課題もありますが、エネルギー利用は大量処理できる有効な手段です。

まとめ:被害木を「資源」として考えるために

気候変動が進む中、大規模災害と被害木の発生はこれからも続くと予想されます。

重要なのは、被害木を「厄介な廃棄物」としてではなく「未利用の地域資源」として捉える視点です。

発災前から自治体・処理業者・木質バイオマス事業者が連携協定を結んでおくこと、仮置き場での適切な分別・管理を行うこと、そしてFIT制度などの仕組みを活用して再生利用の出口を確保しておくことが、迅速かつ効果的な処理につながります。

被害木は適切に処理すれば、電気・熱・建材・農業資材として地域社会に還元できます。

「災害のたびに資源が生まれる」という認識が広がることで、環境負荷の低減とコスト削減を同時に実現する循環型社会への一歩が踏み出せるのではないでしょうか。

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