脱炭素社会|カーボンニュートラルへ向けた新技術3選

テレビやニュースなどで、「脱炭素」や「カーボンニュートラル」といった言葉を見ない日はないのではないでしょうか。

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという概念です。

2015年に合意されたカーボンニュートラル実現へ向けた合意である「パリ協定」、環境問題の解決へ向けて、持続可能な開発目標が掲げられた「SDGs」など、世界各国の意識は確実にクリーンな世界の実現へと集まっています。

脱炭素社会の実現における日本の現状

パリ協定で定められた2030年の日本の温室効果ガス削減目標は2013年度比で26%削減でしたが、政府はこの削減目標を46%へと大幅に修正し、2050年までにカーボンニュートラルを実現すると宣言しました。

しかし、火力発電に依存している日本の現状では、このエネルギー問題を解決しなければカーボンニュートラルの実現は困難であるとされています。

そのような現状を踏まえ、政府はグリーン成長戦略やクリーンエネルギー戦略といった、脱火力発電、そしてカーボンニュートラルの実現に向けた、次世代エネルギーや新技術の開発促進を支援する政策を打ち出しています。

カーボンニュートラル実現へ向けた新技術

2012年より導入された、固定価格買取制度(FIT法)。

これは、温室効果ガスを排出しない自然界に存在するエネルギーである「再生可能エネルギー」を、国が設定した価格で電力会社が一定期間、再生可能エネルギーを買い取る制度です。

この制度の導入により、企業における売電事業や設備容量の規模が大幅に拡大しました。

しかし、それでも日本のエネルギー供給における再生可能エネルギーの割合は8.2%(2018年時点)と、火力発電の依存度を減らす規模とはなっていないのが現状です。

そのような状況下で、近年注目されているのが「水素」や「アンモニア」といった次世代エネルギーや、「カーボンリサイクル」などのCO2回収技術です。

水素発電

燃焼してもCO2を排出しない水素は、日本のみならず世界中で注目されている次世代エネルギーです。

既に、モビリティ業界では水素燃焼エンジンの開発に着手している企業が多くあり、欧州の航空会社大手エアバスでは、ジェットエンジンに水素燃焼エンジンを取り入れる開発を行っています。

政府は2017年12月に開催された、再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議において、「水素基本戦略」を決定するなど、本格的に水素社会に向けた取り組みを開始しています。

この戦略には、水素自動車(FCV)の開発・実用化や、国際的な水素サプライチェーン構築に向けた戦略が盛り込まれています。

日本企業においても、既にトヨタが水素自動車「MIRAI」を導入するなど、他の自動車メーカよりも先行している状況です。

また、大阪ガスにおいては2030年までに水と鉄から水素を製造し、そこから発電を行う技術の開発に取り組んでいます。この技術が実現すれば水素の低価格化が実現できるため、今後の進展が期待されます。

アンモニアの活用

前述の水素は体積が多いため、一度に多くの量を輸送することが困難です。また水素は可燃性であるため引火による爆発の危険性があります。

それらの問題を解決するのが、刺激臭で知られる「アンモニア」です。アンモニアには水素分子が含まれており、水素よりも研究開発が進んでいる物質であるため、既存技術での輸送や生産、保管を行うことが可能なのです。

近年では、そのように水素の輸送手段としてアンモニアが注目されていますが、今後は輸送手段だけでなく、燃料としての利用にも期待されています。

アンモニアは水素と同様に、燃焼してもCO2が発生しない物質なので、脱炭素の観点からも、有効性の高い物質として世界中から注目されています。

CO2回収技術

CO2回収とは、別名カーボンリサイクルとも呼ばれており、CO2を資源として再利用する概念です。

その回収技術の開発・実装が急務となっており、エネルギー業界においても既に多くの企業が取り組みを進めており、川崎重工業株式会社では、高圧CO2を化学品へと変換する技術開発が行われています。

また、電源開発株式会社では、石炭火力から回収したCO2をトマト菜園での肥料としての有効利用や、藻場・漁場の造成効果のある石炭灰重量ブロック材料の開発を進めています。

カーボンリサイクルは多岐にわたる産業で活用することが可能であるため、今後その技術が、カーボンリサイクル産業として拡大・普及することが期待されます。

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