日本で年々増える、紙おむつの使用量。
その理由としては、高齢化が進んだことによって、紙おむつを必要としている人が増加傾向にあるという背景があります。
特に大人用の紙おむつの生産量は増え続け、毎年のように過去最高を更新しています。その結果、2017年時点での国内生産量は約78億枚と、過去10年間で約33億枚も増加しています。
ところが、使用済みの紙おむつは、ほぼすべてがゴミとして燃やされているため、環境への負荷が指摘されています。
そこで今回は、近年進む、使用済みの紙おむつをゴミとして捨てるのではなく、再度紙おむつとしてリサイクルする研究についてみていきましょう。
目次
実は、紙だけじゃない!紙おむつに使われる多くの素材
「紙おむつ」という名前ではありますが、実際の原料は紙だけではありません。
紙おむつは「排泄物を吸収して、衣類を汚さない」という機能を実現するため、実際はさまざまな素材から作られている、ということを知っていましたか?
表面材:ポリオレフィン、ポリエステル不織布
吸収材:吸収紙、綿状パルプ、高分子吸水材(高分子ポリマー)
防水材:ポリエチレンフィルム
止着材:ポリプロピレンなど
伸縮材:ポリウレタン、天然ゴムなど
結合材:スチレン系エラストマー合成樹脂
これらの素材がサンドイッチのように重なり合うことで、それぞれの役割が発揮され、紙おむつとして必要な機能が実現できているのです。
今後増える紙おむつの消費…リサイクルをすることはできる?
使用済み紙おむつのリサイクルは日本だけでなく、世界中を見渡しても本格的な取り組みは行われていません。そのため、使用済み紙おむつのほとんどは、ゴミとして捨てられているのが現状です。
ゴミの処理方法は国や地域によって異なりますが、日本においては焼却施設で燃やす方法が主流です。
しかし、使用済み紙おむつを焼却処分した場合、以下のようなデメリットがあります。
・焼却時に大量の二酸化炭素(CO2)が排出される
・水分を大量に含んでいるため、燃えづらい
・通常のゴミと比べて、燃やすための燃料が余分に必要となる
使用済み紙おむつをリサイクルすることで、こうしたデメリットの解消が期待されています。さらに二酸化炭素(CO2)の排出量を減らすことで、地球温暖化などの気候変動の対策にも繋がります。
紙おむつメーカーの「ユニ・チャーム」の調べでは、紙おむつをリサイクルすることで、リサイクルしない場合と比べて、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出量を87%も削減できることがわかりました。
たとえば、100人分の大人用の紙おむつを1年間リサイクルできれば、2トン積みのゴミ収集車の約23台分のゴミが減り、森林資源100本分の節約になることもわかっています。
高齢化が進んでいる背景から、紙おむつの使用量は今後ますます増えていくことが予想されています。
そのため、紙おむつのリサイクルによって、地球環境にとってさまざまなメリットが見込まれています。
どうやって紙おむつをリサイクルする?
循環型リサイクルが必要なのは、紙おむつも例にもれず同じです。汚れた紙おむつを再度紙おむつとして生まれ変わられるには、どうすればよいでしょうか?
循環型リサイクルの導入
これまで使用済みの紙おむつは「固形燃料」や「建築資材」など、別のものに再利用するリサイクルが行われてきました。
しかし、これからは使用済みの紙おむつをもう一度、紙おむつとして使う「循環型リサイクル」の取り組みが進められています。
循環型リサイクルの手順
紙おむつの循環型リサイクルは、以下の手順で行われます。
1、使用済みの紙おむつを回収する
2、細かく分解して洗浄し、素材ごとに分ける
3、オゾンや酸を使って、残った汚れや臭いを取り除く
4、安全な状態に戻った素材を利用して、再度紙おむつを作る
紙おむつは木材から作られるパルプが使われているため、製造には大量の森林資源が必要となります。そこで循環型リサイクルを行うことで森を守ることに繋がります。
さらに使用済みの紙おむつをゴミとして焼却処分する必要もなくなることから、二酸化炭素(CO2)排出量の削減にも繋がり、循環型社会の実現に貢献することも期待されています。