「無花粉スギ」は花粉症を減らせるだけじゃない!…実は環境メリットがたくさん

鼻水や鼻詰まり、くしゃみが止まらなくなる、いわゆる花粉症。眼球を洗いたくなるほどの目のかゆみに襲われ、集中力も削がれてしまいます。
そんな花粉症を引き起こす原因物質の代表格と言えばスギ花粉ですが、近年では花粉を出さない無花粉スギが登場していることをご存知でしょうか。
この無花粉スギですが、実は花粉を出さないこと以外にも、さまざまなメリットが隠されています。
そこで今回は、花粉症を減らせるだけじゃない無花粉スギについて詳しく見ていきます。

無花粉スギとは?

無花粉スギとは、その名の通り、花粉症の主要な原因となるスギ(杉)の花粉を放出しない特別な品種のスギのことを指します。また類似品種として極めて少ない量の花粉を放出する少花粉スギも開発されています。

一般的なスギと見た目は変わらず、同じように成長しますが、花粉を放出しないことから人々の健康に配慮した植物として注目を集めています。

さらに無花粉スギは一般的なスギと比較して成長が早く、短期間で収穫可能であるため、木材資源の供給をこれまで以上に安定化させることが期待されています。

農林水産省の発表では、現在すべてのスギ苗木の生産量に占める割合は、無花粉スギと少花粉スギを合わせて約50%となっています。令和14年度までに70%まで高めることを目指しています。そのため、今後は木材としてスギを伐採した後は、無花粉スギまたは少花粉スギに植え替える活動が進められています。

出典:花粉の少ない苗木生産量について(林野庁 – 農林水産省)

無花粉スギが注目され始めた背景

古来から木材として利用されてきたスギですが、戦時中や戦後の復興期に木材の需要が増加したことから盛んに植えられてきました。

しかし、スギ花粉はスギを植えてから25〜30年後に飛散量が増えるため、1970年代から戦後に植えたスギから花粉が大量飛散することになり、花粉症の発生が社会問題になりました。

花粉症の原因は化学的に完全に解明されたわけではありませんが、大気中に飛散するスギ花粉が原因の一つとされています。 そのため、政府も原因の究明だけでなく、予防や治療法の開発などの花粉症対策を進めており、花粉を出さない無花粉スギが開発されるに至りました。

実は……無花粉スギは環境にも優しいんです

無花粉スギには花粉を出さないこと以外にも、一般的なスギと比べて以下のメリットがあります。
・温室効果ガスの排出量削減に繋がる
・成長速度が早く、短期間で収穫可能
・雪害や虫害への抵抗力が高い
2020年10月、政府は温室効果ガスの排出をゼロにする、いわゆるカーボンニュートラルを2050年までに達成することを宣言しました。
この「排出量ゼロ」という目標は、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量から、植物などによる吸収量を差し引いた合計をゼロとすることを意味しています。
そのため、自動車による温室効果ガスの排出量を減らすだけでなく、植物を増やすことによる温室効果ガスの吸収量のアップにも力を注いでいます。
そこで植林を進めても花粉を飛ばさず、成長速度が早い無花粉スギが注目されているのです。
スギの木は高齢化することで成長量や二酸化炭素の吸収力が低下してしまうため、新たに植林するだけでなく、既存のスギを植え替えることでも効果が期待できます。

出典:カーボンニュートラルとは(環境省)

人にも環境にも優しい、それが無花粉スギ

花粉症による健康被害を抑止するためにスギを伐採するだけでは、木材資源の安定供給が損なわれてしまうばかりか、土砂崩れや地滑りなどの山地災害を引き起こす原因になってしまいます。

しかし、無花粉スギを活用することで、花粉症の原因となるスギ花粉の飛散量を減らし、山や木を継続して守り育てつつ、山地災害の防止や林業の活性化も見込めます。さらに二酸化炭素などの地球温暖化ガスの吸収を維持・向上させることにも繋がるため、地球環境を守っていく上で無花粉スギの重要性は高まっています。

無花粉スギによって、2050年までには温室効果ガスの排出をゼロにするだけでなく、花粉症になる人がゼロになる未来が訪れる可能性も夢ではないかもしれません。

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