環境問題の歴史を辿る:産業革命から現代までの歩み

環境問題とは、人間の活動によって環境が変化することで生じるさまざまな問題です。
地球温暖化や大気汚染、森林破壊などが代表的な例として挙げられます。
産業革命による環境問題が引き起こされて以降、解決するための取り組みが進められてきましたが、引き続き改善に向けた取り組みが求められる課題も残されています。

環境問題の歴史を辿る

世界の環境問題の始まりは、18世紀半ばから19世紀に起きた産業革命であるとされており、日本で最初に問題視されたのは、19世紀後半でした。
それ以来、国内外で環境問題を解決するための取り組みが進められてきました。

世界の環境問題の始まりは産業革命

環境問題の歴史の始まりは、18世紀半ばから19世紀にイギリスで起きた産業革命にあるといわれています。

産業革命では、機械や蒸気機関車が開発され、生産性や輸送効率が大きく向上しました。
この発展は、現代の私たちの便利な生活にも影響を与えています。
しかし、機械や蒸気機関車を利用するためには、石炭や石油などから得られる化石エネルギーが必要でした。
化石エネルギーの消費量が増えるとともに、二化炭素排出量も増加し、環境問題を引き起こすようになったのです。

日本で初めて問題視されたのは19世紀後半ごろ

19世紀後半に発生した足尾鉱毒事件が、日本初の公害事件です。
明治時代中期に、栃木県の足尾銅山で発生しました。
足尾銅山から排出された鉱毒が渡良瀬川に流入したことで、魚の大量死や、山林と農作物の枯死が生じ、洪水を引き起こすなど、環境に影響を与えました。
さらに、周辺の住民にも健康被害が及んだのです。

1950年代から環境破壊が深刻化する

日本で、大気汚染や水質汚染などの環境破壊が深刻化したのは、高度経済成長期の1950年代からです。
重化学工業の発展により、貴金属や有害化学物質が工場から排出されたことが原因で、日本各地でさまざまな公害事件が発生しました。
特に被害が大きかった以下の事件は、四大公害と呼ばれています。
イタイイタイ病:富山県
水俣病:熊本県
新潟水俣病:新潟県
四日市ぜんそく:三重県

1960年代に「公害対策基本法」が制定される

事業活動が、さまざまな健康被害や環境破壊を起こしていることがわかり、国民の健康と文化的な生活を守るため、1967年に「公害対策基本法」が制定されました。
公害防止に対する政府と事業者の責務と、基本的施策が定められたのです。

また、公害対策基準基本法では「環境基準」の設定が盛り込まれました。
健康や環境を守るために、維持されることが望ましい基準です。
その後、環境基準は1993年に制定された「環境基本法」に引き継がれ、現在以下の項目に対して目標値が設けられています。
・大気
・水
・土壌
・騒音
この基準は、常に新しい科学的知見を考慮し、必要に応じて見直されます。

1970年代に環境庁が発足する

公害問題を最重点課題として扱い、各省庁に分散している公害に関する行政を統一し、自然保護に関する行政を行うため、1971年に「環境庁」が発足しました。
環境庁の発足により、工場からの汚染物排出について規制され、硫黄酸化物による大気汚染対策が進んだのです。
しかし、権限が各省庁に分散していたため、公害問題に対する総合的な対策は困難でした。

2001年に「環境省」として再編成され、公害問題をはじめ、野生動物・植物保護、廃棄物対策、放射性物質監視測定など、環境問題全般を統括する機関へ発展しました。

1980年代から地球温暖化に注目が集まる

1972年、国際的な民間団体「ローマクラブ」が、『成長の限界』を発表したことで国際的に環境問題に注目が集まるようになりました。
『成長の限界』では、人口増加や環境破壊が継続すると、地球上にある資源は枯渇し、人類の成長が限界に達すると注意喚起しています。

その後、1988年に国際的な組織「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が発足しました。
気候変動に関する政府間パネルは、気候変動に関する専門家の研究を整理し、報告書にまとめ、広く周知する役割を担っています。
2023年の報告書では、地球温暖化は人間活動によるものであると結論づけられています。

また、温室効果ガスの削減を目的として、1997年に京都議定書、2016年にパリ協定が採択され、国際的に環境問題への取り組みが行われているのです。

大気汚染公害の現状と今後

イギリスの産業革命をきっかけに発生した環境問題や、日本で発生した四大公害のように、産業が原因で生じる大気汚染を「産業型大気汚染」と呼びます。
産業型大気汚染は、法整備の進展により改善が見られています。

一方、現在世界的に問題視されているのが、急激に進行している「都市・生活型大気汚染」です。
自動車から排出される窒素酸化物や粒子状物質が主な原因であり、地球温暖化への影響や、呼吸器疾患を生じさせたり、癌を誘発したりする可能性があるとされています。
先進国では、再生可能エネルギーの利用が進められていますが、依然として化石エネルギーに依存しており、大気汚染の改善には不十分な状況です。

さらに、人口が増加している開発途上国では、規制が整備されておらず、大気汚染が著しく進行しています。
このように、大気汚染は国際的に取り組む必要のある問題といえます。

環境問題の歴史を知り、未来を考える

環境問題の歴史は、産業革命から始まり、発展に伴い深刻化しました。
しかし、国際的な取り組みにより、産業型大気汚染の改善が見られています。
一方で、都市・生活型大気汚染をはじめ、引き続き解決に向けた取り組みが求められる課題も残されています。
健康で文化的な生活を守り、持続可能な社会を実現させるために、私たち一人ひとりが意識を高め、行動していきましょう。

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