地下水が減っている原因と想定される問題――日本・世界の現状と影響

水はいつでもどこかにあるものだと、なんとなく感じていませんか。
しかし、地面の下に蓄えられた「地下水」はいま、世界各地で急速に失われつつあります。

都市のアスファルト、農業用水の過剰なくみ上げ、気候変動など多くの要因が絡み合いながら、地下水という「見えない貯金」が音もなく減り続けています。

そもそも「地下水」とはどんな水? 涵養のしくみ

地下水とは、雨や雪が地面にしみ込み、地下の砂礫(されき)や岩石の隙間に蓄えられた水のことです。
地下に閉じ込められた水の一部は、何千年もの歳月をかけて岩石の隙間にゆっくりと浸透してきた「化石水」と呼ばれるものもあります。

地下水は、河川水・雨・雪解け水などが地下にしみ込む「涵養(かんよう)」と呼ばれるプロセスによって補充されています。
地下水は年間を通じて温度が一定で安価という特徴から、高度経済成長期以前まで良質で安価な水資源として活用されてきました。
しかし、その補充(涵養)量を超えてくみ上げると、地面の下で深刻な問題が起き始めます。

地下浸透量が減っている3つの原因

地下水が減少している原因について、全国的な少雨傾向それ自体はそれほど大きな問題ではないといわれています。
むしろ問題なのは、降った雨が地下に浸み込む「地下浸透量」そのものが減っていることにあります。

都市化によるアスファルト舗装・排水路の整備

アスファルトやコンクリートで覆われた都市部では、雨が地面に浸み込む前に排水管を通じて川や海へ流れていきます。
帯水層(地下水が蓄えられた地層)に補充される量は大きく減少しており、「水を早く川に捨てる」ことに最適化された排水インフラが、地下への浸透を阻害しているという矛盾があります。

温暖化による高山の積雪量の減少

気候変動による気温上昇は、山岳地帯の降雪量を減らしています。
春から夏にかけて少しずつ溶けながら川や地下に補給されていた雪解け水が減ることで、地下水の涵養量も影響を受けています。

減反政策による水田かんがい面積の縮小

水田はかつて天然の地下水補充装置として機能していました。
田んぼに水を引いてためておくことで、大量の水が地下へしみ込んでいたのです。
農業政策の転換によって水田面積が縮小した結果、農村部の地下水涵養量も減少しています。

日本の地下水の現状——地盤沈下という「見えない被害」

国土交通省によると、日本では明治中期(1890年代前半)から関東平野南部で地盤沈下が確認され、昭和30年(1955年)以降は全国各地に拡大しました。
大阪平野でも昭和初期(1930年代中頃)から認められており、高度経済成長期に地下水の採取量が急増したことが主な原因です。

地盤沈下とは、地下水の過剰なくみ上げによって帯水層の水圧が低下し、粘性土層が収縮して地面がゆっくりと沈んでいく現象です。
一度沈下した地盤は基本的に元に戻らず、長期的には建物や配管の損傷・洪水時の浸水増大などの被害につながります。

採取規制や表流水への水源転換などの対策が功を奏し、近年は沈静化の傾向にあります。
ただし依然として地盤沈下が続いている地域も多数存在しており、渇水時には過剰なくみ上げによって再び進行するケースもあります。

臨海部では海水が帯水層に浸入する「塩水化」が生じ、水道用水や農作物への被害が出ている地域もあります。

世界の地下水はいま——帯水層の71%で水位が低下

2024年1月、学術誌「Nature」で発表された研究結果によると、世界の帯水層の71%で地下水位が低下していることが明らかになりました。
同研究は「急速な地下水位の低下(年間5mm超)は、21世紀の乾燥地域・広大な耕作地帯を中心に広がっている」と結論づけています。

インド:地下水に依存しながら急速に失っていく国

インドの地下水使用量は世界最多で、中国と米国の地下水使用量を合わせた量を上回るほどです。
農業がインドの水資源の約80%を消費する一方、灌漑インフラが未整備な農家が補助金付きの電力で地下水を無制限にくみ上げてきた結果、国内の54%の井戸で水位が低下しています。

2030年までには人口の約40%が安全な飲料水を得られなくなると予測されており、インドは「規制なき過剰利用」と気候変動が絡み合った地下水危機の象徴的な事例です。

地下水が減ることで起きる影響と、私たちにできること

地下水位の低下は、前述の地盤沈下・塩水化にとどまらず、次のような連鎖的な問題を引き起こします。

・河川流量の減少
・生態系への打撃
・食料生産への影響
・気候変動適応への障壁

日本では現在、地下水を守るための対策として、3つのアプローチが組み合わされています。
・水源涵養保安林などの森林保全による自然涵養
・水田への貯水や人工的な帯水層への水の注入といった人工涵養
・法律・条例に基づく採取規制

地下水は「目に見えない資源」であるだけに、問題が可視化されるころには深刻な段階に入っていることが多い資源です。
日常の節水はもちろん、水源となる森林や田んぼが持つ役割を知ることが、地下水を守る第一歩になります。

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